![アメリカ・ノースカロライナ州にある日本人向けの牧場「グリーンウェイランチ[GREENWAY RANCH]」ブログ](../img/head.gif)
2025.November
Sun | Mon | Tue | Wed | Thu | Fri | Sat |
|---|---|---|---|---|---|---|
1 |
||||||
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
12 |
13 |
14 |
15 |
16 |
17 |
18 |
19 |
20 |
21 |
22 |
23 |
24 |
25 |
26 |
27 |
28 |
29 |
30 |
Backnumber
Recent Articles
Dec
15
2014
(That's 録=雑録です)
2004年に取ったパスポートが、今年の4月に切れてしまいしばらくそのままにしていた。
日本のパスポートは、アメリカでも日本領事館で更新できるようになっていて、
ノースカロライナだとジョージア州のアトランタ総領事館で手続きができる。
だけど、申請は書類を郵送すればできるのに、受け取りは本人が出向かなくてはならず、
アトランタまでは片道700キロはある。 ざっと単純に計算しても車で6時間以上。
今の状況では1日牧場を留守にするのは難しいと思っていたら、
年に1回総領事館の人がラリーまでパスポートの手渡しに出張してくれることが分かり、
それに合わせて10年間有効のパスポートを作ってもらった。
私は、ほとんど馬関係でしか外に出ることがないので、ディスカバーラリーとは縁がない。
たまにラリーに出かける時は、行先はいつも知っている食料品店ばかり。
ノースカロライナに引っ越して11年経つのに、
車でわずか50分の距離にあるこの街をほとんど知らない。
分かっているのは、ラリーはノースカロライナの州都で、ちょっとした都会だという程度。
このラリーという街は、英語では Raleigh と書く。
日本語読みをすると、ローリーだったり ラーレー、ラリーと人により様々だ。
ちなみに最寄りの空港名は、Raleigh とDurham の中間にあるため
ローリーダーラム空港と日本の旅行会社では言っているようだ。
晴れてパスポートの所持者になるため、
総領事館が指定してきた13日の午前中にラリーへ行くことになった。
その日は、急いで馬に朝ごはんをあげ、
馬くさい服では都会に出るのは恥ずかしいので着替えて、少しだけオシャレをして家を出た。
高速道路をしばらく走ってラリーに到着。
不慣れになってしまった街中のドライブでもたもたしていたら、
後ろの車にブーっとクラクションを鳴らされてしまった。
信号や道路標識が沢山あり、スミスフィールドでは見ることのない一方通行もある。
おまけに、クリスマス前なので走っている車の数も多く、みんな急いでいる。
クラクションを鳴らした後ろの車に、
(ハイハイ、分かりました。 まったく、そんなに慌ててどこ行くの)、
と独り言、これだから都会の運転は好きになれない。
あちこち迷い、やっと総領事館が指定した住所に到着できた。
そこは、Saint Mary's School というプライベートスクールで、
昔は修道院として19世紀前半に創設された一角だった。
敷地には古いレンガ造りの建物が何棟もあり、その周りには整備された庭があったりで、
車から降りてしばらくその美しさに見とれてしまった。
この日の気温は低めだけど快晴で無風。
乾燥した大気と、それを通して届く陽光の暖かさがなんとも五感に優しかった。
そんなお天気のせいもあってか、
真っ青な空を背景に立っている建物は、荘厳さを増す感じで輝いて見えた。
パスポートを受け取った後、広い敷地の中を散歩しながら
別の棟では日本人会が催している古本市があると分かり行ってみる。
そこでは顔見知りの日本人女性と偶然出会いしばしの会話を楽しむなど、
久々の馬とは関係ない雰囲気を存分に満喫できた。
・・・と思い出に浸りながらブログを書いていたら、
話をした日本女性から12月13日は、
「National day of the Horse」、アメリカでは馬の日だと知らされた・・・。
2014/12/15 1:04:19 | リンク用URL
Nov
22
2014
落馬をしてちょうど1週間たった日曜日の朝、
乗馬予約の電話が入った。
「そちらで馬に乗ることはできますか。」 という男性からの問い合わせに、
「はい、できますよー。」 と答えると、
「それでは今から家を出るので、昼前にうかがいます。」
あまりのフットワークの良さに、
・・・(オッとー!ちょっと待って・・・)と心でつぶやきながら、
「何人でいらっしゃいますか。」
「6人です。」
・・・(うわっー!)と今度は心の中で叫び、
「えーっと、午後ではだめですか。1時くらいでどうでしょうか。あっ、ところでお名前は・・・。」
「井上です。」
なんとも簡単な会話で、6人の初心者を受け付けてしまった。
乗馬の予約はいつでも嬉しい。
だけど、この日はちょっと不安があった。
6人のうち、引馬があれば子供を抱き上げて馬の背に乗せなければならない。
そして、大人でも初めて乗馬をする人には、
またがる瞬間に体を押し上げて手助けが必要な時もある。
クラブによっては、台に乗りそこからまたがってもらう方法をとることもあるが、
ここはなるべく本来のやり方で乗馬を経験してもらいたかった。
だから、部班のように馬を何頭も連ねて、
先頭の馬に誘導させ、いっぺんにレッスンをする方法もとらない。
まだ、完治してない肋骨のひびを抱えてお客様への対応ができるのであろうか。
馬装 (馬に鞍などの馬具を装着する) するのも、
落馬以来やっていないので、ちゃんとできるか心配だった。
普段は、お客様の目の前で馬装するケースが多い。
馬具の装着するところをデモンストレーションしながら、
簡単な説明をすることもある。
ただ、この日は体を気遣いながらの作業となるため、
どれくらい馬装に時間がかかるか分からないし、
お客様には、馬装に戸惑っている様子を見せたくなかった。
これから乗馬を楽しもうとしている人に、
(落馬して)肋骨にひびが入ったので準備するのに時間がかかります、
などという怖い話はご法度だ。
そんな理由から、いつもとは手順を変えて、
レッスンに使うベテランの大人しい馬をあらかじめ用意した。
指示に素直に従ってもらえるよう、馬場で馬をウォーミングアップしている時、
ご一行が到着した。
6名のお客様は、3世代にわたるファミリーだった。
小さい男の子2人に、そのご両親、そしてそのご両親のご両親。
「初めまして。」 の第一声に続いて、私は人数が多い場合の決まり文句を言う。
「名前を覚えるのがすごく苦手です。 もし、間違えたら遠慮しないで言ってくださいね。」
と井上ファミリーに恥ずかしげもなく伝えると、
「みんな覚えにくい名前なので大丈夫です。」
と予約を入れてくれた男性が、「覚えなくてもいい」
といったニュアンスのことを言ってくれた。
後で分かったことだが、この方は脳神経外科のドクターだった。
そんな私を見て、「そろそろ脳の老化が・・・」 と思ったかどうかは定かでないが、
「名前を覚えられない」 なんて威張って言うことではない、と反省。
短い会話からも、自然体で話ができるご家族だと分かり緊張がほどけた。
そんな雰囲気に流されてか、私は
「この前落馬して、肋骨にひびが入ったようで思うように動けないんです。」
と口を滑らしてしまった。
そうしたら、なんとそのドクターは、
「僕も3日前に肋骨にひびが入ったんですよ。」
と言った。
ビックリして理由を聞いたら、テニスをしていて柱に激突したとのこと。
同じような怪我を同時期にしたという、あまりの偶然に私の心は躍った。
(でも、そんな状態で乗馬!・・・するかなぁ・・・) なんて思いながらも、
ありえないような状況に、思わずワクワク。
「えーっ、そうなんですかぁ。 痛くないですか。」 と聞くと、
「1日だけシップをして、今は大丈夫です。怪我をした翌日もテニスをしましたから。」
となんとも頼もしい返事が返ってきた。
結局、2人の男の子はまだ小さかったので引馬をし、
4人の大人は調馬策でレッスン。
ドクターの奥様とご両親は自力で馬にまたがり、
子供たちを馬上に乗せるのと、
(きっと本来なら、馬に飛び乗ることもできるであろう)ドクターの
お尻を持ち上げるのは彼のお父様が手伝ってくれた。
以外にも、一番長く乗って、一番楽しそうだったのは肋骨にひびの入ったドクターだった。
なんでも、この方は学生時代にアイスホッケーでかなり体を鍛えていたそうだ。
あの過激な動きをこなすには、尋常な体作りではなせるわけもなく、
プレイ中には怪我も絶えなかっただろう。
激しいスポーツで鍛えられた人にとって、
肋骨のひびは、転んでひざ小僧でも擦りむいたくらいの感覚だろうか。
乗馬レッスンが終わり、洗い場に繋いである馬を囲んでみんなでおしゃべりをした。
その時に、私は
「あともうちょっとで落馬せずにすんだんですけどね・・・。」
と言ったら、井上先生が
「踏ん張れなかったわけですよね。」
「そうなんですよ! なんか、足が弱ってきたようでスクワットをしようと思います。」
と、「踏ん張れなかった」 という、的を得たコメントに感心していたら、
「足を鍛えるのはスクワットが一番効果がありますよ。 ひざを痛めないように腰を後ろへ引いて、背を伸ばして・・・、こうするとももの裏側の筋肉も鍛えられますよ。」
とお手本を見せてくれた。
(なるほど・・・ももの前後に一度に効果があるなら一石二鳥だ。)
それは乗馬をするには、必要な筋肉だった。
実は、私は落馬をしたその日からスクワットは始めていた。
去年の秋ごろから、足が弱くなったのを実感し、
落馬をきっかけに、いよいよ何かをしなくては・・・、と切羽詰ったからだ。
そのせいで数日間、筋肉痛の方が勝って、肋骨の事は忘れるほどだった。
私のやり方では、危うくひざを痛めてしまうところだったが、
正しい方法を知ることができて幸運だ。
なにしろ、牧場の後を引き継いでくれる人が現れるまでは、
私は現役で馬に乗っていかなくてはならない。
始めはショックだった久々の落馬。
でも、そのおかげで得るものも沢山あった。
今回の場合は「怪我の功名」というより、
「転んでもただでは起きない」 の方が正解かもしれない。
ブログに登場してくださった、井上ファミリー。 ありがとうございました!
2014/11/22 4:09:09 | リンク用URL
Nov
14
2014
落馬した夜は、ひびの入った肋骨が痛んだものの、
翌日は大したことなく、気を良くしていつも通りに作業を進めていった。
今、数ある作業の中で一番中心になっているのが、
2頭いる若馬のトレーニングだ。
ある程度まで乗り込めば一息つけるが、
まだ40鞍そこそこなので間を開けると、また振り出しに戻ってしまう。
落馬をもたらした馬(ダイヤモンド)はその中の1頭で、
落馬直後には乗り直しをして、まずまずの状態にはなったが、
続けて乗れば更に固まるだろうと思い、その日の予定に入れた。
もう1頭の若馬、ライダーは馴致の段階でもかなり手を焼き、
順調にトレーニングが進んでいるダイヤモンドに比べると時間がかかっていた。
この馬も休めるわけにはいかないので、最初に乗ることにした。
ライダーを洗い場に繋ぎ、鞍を乗せる前に裏堀りをするため、
腰を曲げた姿勢で、右の手のひらにライダーの前足の蹄を持った。
そのとき、馬は足を自分に引き寄せ、私から逃れようとした。
反射的に馬の足を逃がすまいと力が入り、
その動きに腕を引っ張られた瞬間、
再びあばらにビリッという衝撃を感じた。
息が詰まるような痛みで、
重い鞍を馬の背に乗せるのは無理だと思い、
この日の騎乗は断念した。
自分を無理に押したために、再び傷を悪化させ、
またバカをやってると思ったら力が抜けた。
そして、乗り運動は痛みが引くまで待とう、
と決心したら気持ちが楽になった。
まだまだ修行が必要なようで、
痛い目に合わないと学習できない。
私は、一揆に事を進める傾向があり、
気持ちにゆとりを持つことができないのだ。
自分で言うのも変だが、目的達成意欲は旺盛なほうだと思う。
計画したことは頑なに実行し、
完結させるという意味では成果を上げている。
小さなことでも決めたことを終わらすと、
「やった感」 が体を満たし、
その感覚が好きだからだ。
そんな性分は、
結果を出すことに夢中になりすぎて、
目的地だけを見続けるため性急にもなる。
その行程に注意を払わないので、
目的地へ進む間に見える大事なことや、
そこから学べる宝の山に気が付かないことになる。
そんな人間だが、ありがたいことに私は、
動物や自然から教えられることが沢山ある。
興味を持ち、アンテナを張っている方向がそっちなので、
当然といえば当然で、特に身近にいる馬たちからは、
数々の気付きを与えられてきている。
今回の出来事も馬たちが、
まだ変わる必要がある自分に駄目押しのような感じで、
その機会を与えてくれたのだろう。
まだ落馬の余韻が残っている4日後に、
装蹄師のダレルが来た。
あばらにひびが入ったことを伝えたら、
彼は、馬の蹄を削りながら自分の体験談を話し始めた。
ダレルは装蹄中に馬に蹴られて、あばらを2本折ったことがあるそうだ。
かがんで後ろ足の蹄を削っている最中に、
回し蹴りをもろに胸に受けて、飛ばされるほどだったという。
まだ若くて、貯金もなく健康保険にも入ってなかったので、
骨折から2週間後には仕事に復帰したという。
復帰直後は、装蹄をするときに痛みを軽減するため、
どう自分が工夫をしたか、ということを身振り手振りで話してくれた。
辛い経験のはずなのに、思い出を語る彼はなぜか楽しそうだった。
そして、帰り際に重量のあるウエスタン鞍を楽に馬の背に乗せる方法と、
餌の入った20キロ以上ある袋を、
体に負担をかけないように持ち上げるコツも、
わざわざ実践しながら教えてくれた。
その2日後にジミーおじさんが訪れた。
乾草を届けに来てくれ、また怪我の体験談となった。
ジミーおじさんは重機を操縦していたとき、
それが大きくバウンドした際、
固いシートに座っていたため尾てい骨にひびが入ったこと。
それと、農機具を修理中にバランスを崩して前に転んだため、
鎖骨を機械にぶつけて骨折した経験を話してくれた。
ジミーおじさんが帰り際に、力を必要とする作業を手伝ってくれたので、
一緒に作業しながら、骨折のあとは仕事を休んだのか聞いたら、
「1年365日、ずっと休んだことはないよ。」
と言った。
ダレルやジミーおじさんは仕事柄
怪我をしても休むことができない環境や、
それに伴う苦労を知っている。
この2人には、私がいつも感心する共通点がある。
それは、人に頼らず自分でなんでもする、
そして人任せにできないところだ。
2人とも、職人気質で仕事に対する考え方や、
自分のやり方にこだわりを持っている。
でも、そのこだわりは決して固執しているものではなく、
状況とバランスを取りながらのもので、
そこに無理がない。
ダレルはグリーンウェイランチに装蹄に来てもらうようになって8年になるが、
ベテランの装蹄師が助手を伴うのに比べると、
ほとんど1人で仕事をすることが多い。
40年近い装蹄経験と、確かな腕を持ち、
彼のもとに装蹄を勉強しに来る人も多いようだが、
見込みがないとすぐ断ってしまう。
ジミーおじさんもダレルとよく似た感覚を持ち合わせている。
広大な面積の農地を相手にするので、
普通なら人を雇わなくてはならない規模の仕事をしているが、
コツコツと朝から晩まで1人で働いている。
大変そうなので、「誰か雇わないの」 と聞いたら、
「一人の方がやりやすい」 と言っていたことがあった。
彼らは、何十年という年月に渡って自分が決めた道を、
自分のやり方で誇り高く歩いて来ている。
その道を迷うことなく地道に歩き続け、
山や谷を越えながら今いるところがある。
きっと苦労をすることの方が多いはずなのに、
苦労話をするときは、
どこか子供っぽいキラキラとした輝きが瞳の奥にあった。
良い仕事をしても人から褒められるでもない、
大変な労働と忍耐、技術と工夫が必要な仕事に
この2人は、心から愛情を注いでいるんだな、と感じた。
そんなジミーおじさんとダレルのけして若くはない、
でもスッと筋の通った後姿と、
その体の中にある確固たる信念を見たとき、
私の心の琴線になにか触れるものがあった。
それは、動物や自然からだけでなく、
初めて私が人から「なにか」を感じた瞬間だった。
2014/11/14 9:07:58 | リンク用URL
GREENWAY RANCH
7875 Brogden Road Smithfield NC 27577 U.S.A
TEL:1-919-915-1088 | FAX:1-919-934-5837 | E-mail:midorifjmtpc2@gmail.com
©GREENWAY RANCH. All RIGHTS RESERVED.