アメリカ・ノースカロライナ州にある日本人向けの牧場「グリーンウェイランチ[GREENWAY RANCH]」ブログ

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Nov

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2014

怪我の功名 (突然の予約)

落馬をしてちょうど1週間たった日曜日の朝、
乗馬予約の電話が入った。

「そちらで馬に乗ることはできますか。」 という男性からの問い合わせに、
「はい、できますよー。」 と答えると、
「それでは今から家を出るので、昼前にうかがいます。」
あまりのフットワークの良さに、
・・・(オッとー!ちょっと待って・・・)と心でつぶやきながら、

「何人でいらっしゃいますか。」
「6人です。」
・・・(うわっー!)と今度は心の中で叫び、
「えーっと、午後ではだめですか。1時くらいでどうでしょうか。あっ、ところでお名前は・・・。」
「井上です。」

なんとも簡単な会話で、6人の初心者を受け付けてしまった。
乗馬の予約はいつでも嬉しい。
だけど、この日はちょっと不安があった。

6人のうち、引馬があれば子供を抱き上げて馬の背に乗せなければならない。
そして、大人でも初めて乗馬をする人には、
またがる瞬間に体を押し上げて手助けが必要な時もある。

クラブによっては、台に乗りそこからまたがってもらう方法をとることもあるが、
ここはなるべく本来のやり方で乗馬を経験してもらいたかった。
だから、部班のように馬を何頭も連ねて、
先頭の馬に誘導させ、いっぺんにレッスンをする方法もとらない。

まだ、完治してない肋骨のひびを抱えてお客様への対応ができるのであろうか。
馬装 (馬に鞍などの馬具を装着する) するのも、
落馬以来やっていないので、ちゃんとできるか心配だった。

普段は、お客様の目の前で馬装するケースが多い。
馬具の装着するところをデモンストレーションしながら、
簡単な説明をすることもある。

ただ、この日は体を気遣いながらの作業となるため、
どれくらい馬装に時間がかかるか分からないし、
お客様には、馬装に戸惑っている様子を見せたくなかった。

これから乗馬を楽しもうとしている人に、
(落馬して)肋骨にひびが入ったので準備するのに時間がかかります、
などという怖い話はご法度だ。


そんな理由から、いつもとは手順を変えて、
レッスンに使うベテランの大人しい馬をあらかじめ用意した。
指示に素直に従ってもらえるよう、馬場で馬をウォーミングアップしている時、
ご一行が到着した。

6名のお客様は、3世代にわたるファミリーだった。
小さい男の子2人に、そのご両親、そしてそのご両親のご両親。

「初めまして。」 の第一声に続いて、私は人数が多い場合の決まり文句を言う。
「名前を覚えるのがすごく苦手です。 もし、間違えたら遠慮しないで言ってくださいね。」
と井上ファミリーに恥ずかしげもなく伝えると、
「みんな覚えにくい名前なので大丈夫です。」
と予約を入れてくれた男性が、「覚えなくてもいい」
といったニュアンスのことを言ってくれた。

後で分かったことだが、この方は脳神経外科のドクターだった。
そんな私を見て、「そろそろ脳の老化が・・・」 と思ったかどうかは定かでないが、
「名前を覚えられない」 なんて威張って言うことではない、と反省。

短い会話からも、自然体で話ができるご家族だと分かり緊張がほどけた。
そんな雰囲気に流されてか、私は
「この前落馬して、肋骨にひびが入ったようで思うように動けないんです。」
と口を滑らしてしまった。

そうしたら、なんとそのドクターは、
「僕も3日前に肋骨にひびが入ったんですよ。」
と言った。

ビックリして理由を聞いたら、テニスをしていて柱に激突したとのこと。
同じような怪我を同時期にしたという、あまりの偶然に私の心は躍った。
 
(でも、そんな状態で乗馬!・・・するかなぁ・・・) なんて思いながらも、
ありえないような状況に、思わずワクワク。

「えーっ、そうなんですかぁ。 痛くないですか。」 と聞くと、
「1日だけシップをして、今は大丈夫です。怪我をした翌日もテニスをしましたから。」
となんとも頼もしい返事が返ってきた。

結局、2人の男の子はまだ小さかったので引馬をし、
4人の大人は調馬策でレッスン。

Capture2.JPG


Capture3.JPG



ドクターの奥様とご両親は自力で馬にまたがり、
子供たちを馬上に乗せるのと、
(きっと本来なら、馬に飛び乗ることもできるであろう)ドクターの
お尻を持ち上げるのは彼のお父様が手伝ってくれた。
以外にも、一番長く乗って、一番楽しそうだったのは肋骨にひびの入ったドクターだった。

なんでも、この方は学生時代にアイスホッケーでかなり体を鍛えていたそうだ。
あの過激な動きをこなすには、尋常な体作りではなせるわけもなく、
プレイ中には怪我も絶えなかっただろう。

激しいスポーツで鍛えられた人にとって、
肋骨のひびは、転んでひざ小僧でも擦りむいたくらいの感覚だろうか。


乗馬レッスンが終わり、洗い場に繋いである馬を囲んでみんなでおしゃべりをした。
その時に、私は
「あともうちょっとで落馬せずにすんだんですけどね・・・。」
と言ったら、井上先生が
「踏ん張れなかったわけですよね。」

「そうなんですよ! なんか、足が弱ってきたようでスクワットをしようと思います。」
と、「踏ん張れなかった」 という、的を得たコメントに感心していたら、
「足を鍛えるのはスクワットが一番効果がありますよ。 ひざを痛めないように腰を後ろへ引いて、背を伸ばして・・・、こうするとももの裏側の筋肉も鍛えられますよ。」
とお手本を見せてくれた。

(なるほど・・・ももの前後に一度に効果があるなら一石二鳥だ。)
それは乗馬をするには、必要な筋肉だった。


実は、私は落馬をしたその日からスクワットは始めていた。
去年の秋ごろから、足が弱くなったのを実感し、
落馬をきっかけに、いよいよ何かをしなくては・・・、と切羽詰ったからだ。
そのせいで数日間、筋肉痛の方が勝って、肋骨の事は忘れるほどだった。

私のやり方では、危うくひざを痛めてしまうところだったが、
正しい方法を知ることができて幸運だ。
なにしろ、牧場の後を引き継いでくれる人が現れるまでは、
私は現役で馬に乗っていかなくてはならない。

始めはショックだった久々の落馬。
でも、そのおかげで得るものも沢山あった。
今回の場合は「怪我の功名」というより、
「転んでもただでは起きない」 の方が正解かもしれない。

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ブログに登場してくださった、井上ファミリー。 ありがとうございました!







2014/11/22 4:09:09 | リンク用URL

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