アメリカ・ノースカロライナ州にある日本人向けの牧場「グリーンウェイランチ[GREENWAY RANCH]」ブログ

2025.November

Sun

Mon

Tue

Wed

Thu

Fri

Sat

      

1

2

3

4

5

6

7

8

9

10

11

12

13

14

15

16

17

18

19

20

21

22

23

24

25

26

27

28

29

30

Backnumber

Image Index

みどりのThat’s録・(馬旅2020年 No. 05号) みどりのThat’s録・(馬旅2020年 No. 05号) みどりのThat’s録・(馬旅2020年 No. 05号)
みどりのThat’s録・(馬旅2019年 No. 04号) みどりのThat’s録・(馬旅2019年 No. 04号) みどりのThat’s録・(馬旅2019年 No. 04号)
みどりのThat’s録・(馬旅2019年 No. 04号) みどりのThat’s録・(馬旅2019年 No. 03号) みどりのThat’s録・(馬旅2019年 No. 03号)
みどりのThat’s録・(馬旅2019年 No. 03号) みどりのThat’s録・(馬旅2019年 No. 03号) みどりのThat’s録・(馬旅2019年 No. 02)
みどりのThat’s録・(馬旅2019年 No. 02) みどりのThat’s録・(馬旅2019年 No. 02) みどりのThat’s録・(馬旅2019年 No. 02)
みどりのThat’s録・馬に魅せられて (馬旅2019年 創刊号01) みどりのThat’s録・馬に魅せられて (馬旅2019年 創刊号01) みどりのThat's 録 (ウィリー)
みどりのThat's 録 (ウィリー) みどりのThat's 録 (ウィリー) みどりのThat's 録 (ウィリー)
ジョイのつらつら日記(ビフォーアフターのアフター) ジョイのつらつら日記(ビフォーアフターのアフター) ジョイのつらつら日記(ビフォーアフターのアフター)

Feb

06

2014

天使の降臨 (ジミーおじさん)

グリーンウェイランチでは、馬たちに2種類の乾草を与えている。
一つはアルファルファで、それは赤土を好み、
遠く西の方で作られて、この地域まで輸送されてくる。

そして、もう一つは砂地の多いこの周辺で育つ
コースタルバミューダ(通称コースタル)という牧草だ。

DSC01280.JPG


(左がスクエアベールのアルファルファで、右はラウンドベールのコースタル)


コースタルは、グリーンウェイランチの近くでもよく作られる牧草だが、
それに関わらずアルファルファと同様、
私はコースタルを手に入れる事で苦労した。

質が良く、値段が手頃で、必要な時に確実に売ってくれる農家を探すのは
いつも頭の痛い作業だった。

あるときは、肥料に鶏糞を使ったため乾草に大量の羽根が混じることもあり、
はたまたビニールやタバコの吸い殻、ペットボトルなどのゴミが入っていたりした。

よく乾燥させないで、ベーリング(ロール状や四角に束ねる)
したものにはカビが生えていることもあった。

また、農作物の常で収穫は天候に左右されるため、
生産量が少ないときは売ってくれない。

私は初めてお金を払っても世の中には買えない物がある、と言う貴重な体験をし、
戦争でお米のなかった頃の祖母の苦労話が脳裏をかすめた。

そんな境遇で、牧場をオープンしてから4年間というもの、
信頼できる農家さんを探し回ることとなり、
私は、やっとジミーおじさんにたどり着くことができた。


ジミーおじさんは、グリーンウェイランチの近所に住んでいる農家さんで、
この土地で生まれ育ち、何十年もずっと農業を営んできた。

自分の畑で作物を作るかたわら、他の農地も借りてかなり手広く農作業をする、
生粋のファーマーだ。
彼は、今まで取引をしてきた人たちとは違い、誠実で几帳面な人だった。

牧場が毎月必要とする乾草の量を伝えたら、
その分は他へは売らず、ストックする気配りをしてくれた。

その上、時間にも正確で、配送すると約束した日時は必ず守ってくれる。
そんな人柄がとてもありがたく、
3年前からずっと、ジミーおじさんの作る乾草をここの馬たちは食べている。


最初の頃、
ジミーおじさんがグリーンウェイランチに牧草を届けに来た時は、
無愛想で怖い印象を持った。

何かにつけ握手や、ハグをしてくる人たちとは違い、
余計な事は口にせず、無表情に乾草の積み下ろしを終わらすと直ぐに帰って行くので
いつも事務的な会話しかしなかったが、彼の実直さは伝わってくるので私は満足だった。

あるとき、トラクターの様子が変だったので、
ジミーおじさんが乾草を届けてくれたとき、思い切って相談してみたら、
予想に反して、丁寧にトラクターを見てくれた。

そして、トラクターは修理が必要な状態だと分かり、
ディーラーに頼もうか迷っていたら、
「自分の甥っ子がこれくらいなら直せる。 ディーラーの修理だとすごく高くつくよ。」
と言って甥っ子さんに連絡までしてくれた。


私は、牧場を作ろうと決めた時から、
初めて経験するような人数の人たちと、取引をしなければならなかった。

そして、それは人数ばかりでなく、工事関係者という、
自分には、全く未知な分野で仕事をしている人たちでもあった。

中には良心的な人もいたが、
ほとんどは気を引き締めて接しないと、
足下につけ込む人が多かったことも事実だった。

今思い返せば、
土地探しから工事が終了するまでの約3年間を
油断が許されない、いくさに挑むような気持ちで過ごしたため、
悲しいかな、私の中には 「人を見たら泥棒と思え。」
という精神が根付いてしまっていた。

ずっと、自分の弱みにつけ込まれた事を思い出しては怒りを感じ、
心の中で相手を責め、世間知らずな自分をなじっても
行き場のない苦しい感情がそこにあり、
それを浄化させるのに何年もかかっていた。

そして、大変な時期に猫のゴン太が私の元に来たときと同じように、
今度はジミーおじさんが、私の前に現れてくれた。
それはまるで、何らかの理由で神様が計らったとしか思えなかった。

2014/02/06 10:15:54 | リンク用URL

Jan

30

2014

仔馬たちの初雪

世間を騒がせている、アメリカの天候ですが、
ここでは、これと言っていつもの冬と大した差はないと思っていたら、
とうとう、ノースカロライナ州の東側も積雪となりました。

ノースカロライナは、東西に長く伸びている州で、
山がある西側と海に近い東側では、お天気や気温にかなりの差があります。

そして、グリーンウェイランチはどこにあるかというと、
ここから東へ2時間半ほどドライブすると、大西洋を臨むことができます。

そのようなロケーションなので、冬は比較的楽なのですが、
昨晩は、夜通し雪が降り続き、積雪10センチとなりました。

一夜で牧場の景色に大変化をもたらし、
飼い付けで家を出たときの今朝は、一面銀世界です。

DSC01515.JPG




昼夜放牧をしている馬たちの中で、
気になったのは1歳未満の2頭の仔馬でしたが、
初めて見る雪を楽しむかのように、元気に走り回っていました。

DSC01516.JPG


(右の2頭は去年の春生まれました。)

DSC01520.JPG


(ヒゲにつく氷も初体験。)


北部の人達には笑われてしまいそうですが、
積雪10センチというのは、この辺では大雪です。
学校は休校、空港はほとんどの便がキャンセルとなりました。

ローカルのニュース番組では、5分おきくらいに
「できる限り、家にいるように。 やむを得ず運転をするときは、
細心の注意を払うように。」 とキャスターが何回も呼びかけていました。

まぁ、無理もないことで、
四駆の車は珍しく、
また、雪道用のタイヤやチェーンを持っているのは、
ウィンタースポーツを楽しむ人ぐらいです。
そもそも雪道の運転に慣れている人も少ないからです。

今朝、番犬のハナは、
久しぶりに見る雪に仔馬同様ハッスルして、
そこら中を走り回っていました。

そろそろ高齢の域に達してきましたが、
達者なばあちゃん犬です。

DSC01526.JPG


(走った後に一息)






2014/01/30 8:39:23 | リンク用URL

Jan

25

2014

天使の降臨 (変われぬ自分)

水漏れは建物内ではないと分かったので、少し安堵はしたものの、
問題の場所は公共水と井戸水を運ぶ管の接続部分の可能性が大で、
これは修理するのにやっかいな場所だった。

長靴に履き替え、シャベルを片手にどうしたものかと考え、
いずれにしろ水がしばらく使えなくなるので、
バーンにある全てのバケツと、放牧地の桶を水で目一杯満タンにした。

(寒い時期でよかった・・・)と思った。
夏場ではとても無理だが、これで2日は馬の水が確保できるはずだ。

井戸水の流れを開閉する大本のコックが母屋にあるので、
それを閉めにいき、また馬小屋の方へ向かった。
歩くには長い距離を往復して、水道管の状態を知るための作業にとりかかった。

沼地となった地面に広がる水の量は思った以上に多く、
最初にそれを掻き出さなければ穴が掘れない状態だった。

道路にそってditch と呼ばれる溝が走っているので、
そこに水が流れていくようにシャベルで道を造り、
流れずに残った水は、小さなバケツとシャベルですくい出した。

やっと地面が見え、次は穴掘りだ。
コックの上は空洞にしていたものの、年月とともに木箱は朽ちて、
そこを馬が歩いたため埋まってしまっていた。

そのため、まず水道管のある場所を探す必要があった。
シャベルが水道管にあたって割れないよう、
手に伝わる感触に注意を向けながら穴掘りをすすめた。

100_3758.JPG


(地中の水道管のようす。ブログとは関係ない場所。)

しばらくして、「コツッ」と触れる物がありその周りをゆっくりと掘っていくと、
目指す白い管が見えてきた。

(これってドラマで見る外科手術に似てる・・・)なんて思った。
手術中に開腹した部分が、大きな血管に傷がついたため血の海となり、
執刀医がその血液の吸入を助手に指示する。
そして、あわやというところで傷ついた箇所が見つかり、
縫合するというシーンが思い出された。

あぁ、だけど私には助手がいない・・・。
それに、水道管の場合はそれだけではすまない。

例え傷のついている部分を確定できても、
修理をするとき、管をかなりの長さでむき出しにして、
さらに管の下の土も取り出さなくてはならなかった。

大変な事になった・・・、と思ったがとにかくやるしかない。
掘り進めながら、ジャケットを脱ぎ、また少しして、その下のトレーナーも脱ぐ。
それでも背中に汗をかいてきた。

道路に近い所で穴掘りをしているので、
頻繁に通り過ぎる車の何台かはスピードを緩めて、
何事かとチェックをしているのを感じた。

牧場建設の工事を始めたとき、
この地域の人達はとても物見高いことに気がついた。

田舎という土地柄のせいもあるのか、どうも近所の様子が気になるみたいだった。
工事中、頻繁に敷地内に車で乗り込んでくる見知らぬ人に、
どう対応していいのか悩んだことも数知れず。

そんな人達には、
「今度ここへ引っ越すことになったXXXです。 よろしくお願いします。」
と挨拶をすればいいわけだが、私にはそれを躊躇する理由があった。

それは 「何も知らないよそ者が一人で牧場を建てている、しかもそれは女。」
ということをなるべく誰にも気づかれたくなかったからだ。

頼りなげで、その状況につけ込まれるのも嫌だし、噂されるのも嫌だった。
できる事なら、
日本で一人住まいの女性がアパートの物干しに男性物の下着を干して、一人住まいでない風をよそおう、
そんなカモフラージュをしたいくらいだった。

今考えれば、当時は気がつかなかった自分の中の
「心細さ」や「自信のなさ」 がそういう感情を湧かせたのだと思う。

色々思い出しながら、穴掘りを始めて30分も経った頃、いい加減疲れが出て来た。
悪いことに、水漏れをした場所には2つのコックが埋まっていて、それらは離れている。
その両方をむき出しにする必要があり、
コック同士を繋いでいる水道管も全て泥を取り除かなくてはならなかった。

やっとのことで、コック2つと水道管を見える状態にしたものの、
肉眼では壊れている部分は見あたらなかった。

そのため、今度は水を通してその場所を確定するのに、
また母屋まで行って大本のコックを開かなくてはならない。

修理のための部品の買い置きはないので、ホームセンターまで行く必要もある。
それらに費やす時間と労働と、まだ終わってない日常の作業を考えたら途方にくれてしまった。

ため息をつきながら遠くを見たとき、ふっと自分の有様に気がつき思わず苦笑した。
いつでも何かあると躍起になって物事を進める、そんな以前の私がそこに居た。

猫のゴン太を通して啓示を受けた事をまた忘れてしまっていたのだ。
「柔らかく、しなやかに生きて行きなさい。」
そう教わったじゃないか・・・。

私は、気持ちを切り替えてジミーおじさんに電話をすることにした。

DSC00954.JPG


http://www.greenway-ranch.com/blog/?id=253
(ゴン太のはなし、独立記念日)
















2014/01/25 8:49:40 | リンク用URL

Page Top