アメリカ・ノースカロライナ州にある日本人向けの牧場「グリーンウェイランチ[GREENWAY RANCH]」ブログ

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Jan

19

2011

グリーンウエイランチ流ブレーキング (by みどり)

今年も牧場ではもっとも神経を使い緊張する作業を始めた。 
2歳子のブレーキング(新馬調教)だ。
今回はウエスタンの新馬調教に関心のある彩ちゃんが引き受けることになった。

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(2009年撮影)
この子は2009年3月生まれで、通称「チビ」と呼ばれている。
気の毒なニックネームだけど実際本当に小さいので仕方ない。
正式名は Gunnerized Einstein (ガンマンになったアインシュタイン)と命名。
女の子に付けるにはすごい名前だが、両親の名前を考慮しながら「強く賢く」みたいな願いを込めて決めた。

ガナ−を父親に持つ繁殖牝馬にアインシュタインリボルーションを付けたものだ。
身長はあとで伸びてくれればいいし、たとえ小さく育ったとしても地面からの距離が近いから良としようと変に納得する。
小さいながらに体型は幅があって綺麗な子馬だと思う。
将来はマッチョな牝馬に変身するだろうと期待している、笑。

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(2010年撮影)

脱線はこれくらいにして・・・、

ブレーキングと言ってもいきなり放牧地から引っ張り出して鞍を背負わせることはしない。
ブレーキングは人それぞれやり方が千差万別で、どこへ行っても不思議なほどパターンは異なる。

グリーンウエイランチ流はまず放牧地で人にハンドリングされることに慣れた後(と言っても産まれた頃から触りまくっているので人への警戒心はない)円馬場に連れてきて手入れ、足あげなどをしながら円馬場という違う環境に慣れさせる。

放牧地から移動すると仲間から遠ざかり景色も変化するので、子馬は不安な状態になりそわそわしだす。
この状況では作業を先へ進めてもマイナス面が多く出るため、それが落ち着くまでじっくりと子馬との会話を続けることからする
優しい声をかけ、ブラッシングなどをして体に触れていると人に対して集中してきて、落ち着きを取り戻し引き手をドロップしたままでもそこにじっとしている様になる。

ブレーキングは今後の乗り運動にもかなり影響してくるので、この段階で子馬に怖い思いをさせるのは絶対御法度だと思っている。
けして急がず充分子馬に納得をしてもらい信頼感を深めながら、一つずつ丁寧に作業をこなしていくことが大事だ。

子馬にとって人がやることは未知の事で、ハンドラーはできないことに対して子馬を懲戒してはならない。
子馬も人と同じで個性がそれぞれあり、理解を示すまでの時間差があるので辛抱強く接することが大切だ。

何世代にもわたりレイニングホースとして繁殖されてきた現在の馬達は、持って生まれた素質やメンタリティーがあり、充分扱いやすくなっている。
そのことを踏まえ、もしトラブルが起こったときは自分のやり方を見つめ直し何か馬にマイナスな影響を与えてないか考えてみるのも良いと思う。

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(2011年撮影)
チビのブレーキング諸作業は彩ちゃんがブログを載せるのでここでは省略するが、馬の本質がよく観察できる作業でかなり興味深いものがある。
アメリカではこのブレーキングを専門としている人もいて、彼らは馬との関わりのなかでこの部分が一番面白いとも言う。

2011/01/19 3:17:54 | リンク用URL

Dec

20

2010

レイン♪レイン♪レイニング〜 (6) (by みどり)

以前 「レイン♪レイン♪レイニング〜(3)」 でクロップアウトの話を書かせて頂きました。

両親がクォーターホースなのに馬体の白い部分が多すぎて、当時はクォーターホースとして登録できなかった1993年産まれの牡馬の話です。
後にこの馬の競技成績が高く評価され、AQHAの登録ルールは変更されるに至りました。
その馬の名前をガナ−(Gunner)と言い、今は種馬として優秀な産駒をたくさん出しています。

ブログで取り上げた2010年WEGレイニングの個人戦で優勝した馬、Gunners Special Nite(父親はガナ−)を始め、今年のオープンクラスフチュリティーで優勝した Spooks Gotta Whiz のお父さん(Spooks Gotta Gun)のお母さん(Katie Gun)はガナ−のお母さんでもあります。

ガナ−がレイニング界で幅広く活躍するまでには様々ないきさつがありました。

この馬は1996年のオープンフチュリティーに クリント ハーベティーが騎乗してリザーブチャンピオンになり1998年までクリントと大活躍しました。
その後はオーナーが自分の牧場に引き取りノンプロクラスでしばらく競技に出たあと、オープンクラス選手ブライアント ペースによって2001年のUSET(United States Equestrian Team)ワールドチャンピオンシップの予選と本戦でスコア
229,233,226.5を記録して優勝しました。
そしてUSETの大会を最後にティム マックウェイが破格の条件でガナ−を購入し、今はテキサスのマックウェイステーブルで種馬として繋養されています。

ガナ−は競技成績が素晴らしいだけでなく、色々な意味で個性的なため大勢のファンを引き寄せています。
彼の姿はひと目見ると忘れられないような特徴をもっているのも理由の一つです。

まず毛色が他のクォーターホースとはかなり違います。
額と頬を結んだ線から鼻先にかけて真っ白で、四肢はかなり上の方まで四白、シッポも付け根の少し下から真っ白という姿です。
栗毛の馬体に広範囲の白色があり、おかぐら耳(普通の馬の耳はピンと立っているが、おかぐらは耳の力が抜けているような感じでプラプラとしている)の顔は愛嬌たっぷりで、目は薄いブルーがかかっています。

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それとこれは暗黙の内にたくさんのレイナーが知っていることですが、ガナ−は生まれつき耳が聞こえないのです。

レイニングは競技中に音声の扶助を使うことができますが、一番の見せ所のスライディングストップをするときや、スピンを停止させるときに使う「ウォー」というライダーのかけ声はガナ−に通用しません。

またスピードアップを促すときや、駈歩発信の合図としての舌鼓も聞こえないわけです。
これはレイニング競技という瞬時に激しい動きを次々と演じなければならない舞台で、ライダーや馬にとってその遂行は更に難しくなります。

その様な性質の競技にガナ−は耳が聞こえないというハンデを越え、ライダーの扶助を敏感に感じ取って演技し、たえず高得点を出しました。
それを考えると、この馬の感覚や運動能力は計り知れないものがあると思います。

通常であれば耳が聞こえない馬を種馬に選ぶのは敬遠されやすいのを、今でも多くのガナ−の子供が活躍している事実を見るとこの馬の非凡さが分かるというものです。

馬に携わるようになってから沢山の馬を見てきましたが、この馬を身近に接する機会があったときは一種の神がかったものさえ感じました。
忘れることのできない一頭です。

2010/12/20 5:37:03 | リンク用URL

Nov

26

2010

2歳ッ子の初装蹄 (by みどり)

夏時間が終わったかと思うと、早くも昨日はサンクスギビングでした。
今日はブラックフライデーと言って、サンクスギビングのあと各お店で大セールがあります。

日本もこの時期になると皆さんなにかと慌ただしくなると思いますが、アメリカもサンクスギビングが終わると次はクリスマスモードとなり旅行や家族の集い、ショッピングであちこちが混み合う季節になりました。

そんな時節に先日は2歳ッ子の初装蹄をしました。

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この子、ウィリーは2008年4月産まれの女の子ですが、3歳年上の同じ両親を持つお兄さんとは違い用心深く恐がりで初期のブレーキングも無理をさせずのんびりとやってきました。
その子がいよいよレイニングホースにとってとても大事な蹄鉄、スライディングプレートを付ける段階になりました。

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スライディングプレートとは後ろ足に付ける特殊な蹄鉄でレイニング競技の動きの一つスライディングストップを馬がたやすく出来るようにするための蹄鉄です。
普通の鉄に比べ幅が広く、鉄尾を蹄より後ろに長く伸ばした形の蹄鉄です。

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ウィリーの運動、調教を乗馬歴が長く馬に優しい研修生の彩ちゃんに託しています。
グリーンウエイランチに来た当初、ブリティッシュの経験しかない彩ちゃんにレイニングホースの乗り方を知ってもらうため騎坐や脚、拳の使い方をベテランの馬達を通して覚えてもらいました。

最初は乗り方の違いに戸惑っていましたが、やはり馬から伝わってくることを感じる感覚がすでに備わっているため覚えは早かったです。
研究熱心な彼女はいつの間にかレイニングホースを自由にコントロール出来るようになり、ウィリーもそれに伴いサークルがきれいに回れるようになり、頭を下げリズムを乱さず駈歩が出来る様になって来ました。
「ウォー」とストップの音声扶助を与えると正確に反応するようになったので、スライディングプレートをはかせるところまできたと判断しました。

自分の所で生産した馬に対する思い入れはまた別のものがあり、初めての装蹄を装蹄師さんに任せるときは緊張します。
まるで親が自分の子どもを初めて学校の先生に会わせるような気分です。
「どうか大人しく良い子にしてね、聞き分け良くして装蹄師さんに気に入られるのよ・・・」、なんて感じです、笑。

そんな願いは見事に伝わらず、日頃彩ちゃんが装蹄の疑似体験をさせていてその時は大人しくしていたので大丈夫とも思ったのですが、恐がりの性格が災いしてしまいました。
装蹄中にビビって鎮静剤を打った方が安全ということになったので軽いものを投与した次第です。

昔は装蹄師さんの職人意識もあってか鎮静剤を打つことはやらなかったそうですが、馬が落ち着かないと人馬ともに危険なばかりでなく馬も装蹄に対してマイナスな記憶を持ちます。
そんな意味でも、馬が装蹄に慣れるプロセスを楽にするため鎮静剤の投与は懸命な処置かと思われました。
ほとんどの馬は装蹄が痛くも怖くもないと納得すると大人しくさせるようになるものです。
恐がりの馬でも大体2〜3回の装蹄で薬は必要なくなります。

ハラハラドキドキのすえ無事にスライディングプレートを付けてもらったウィリーはまるでピカピカのランドセルを背負った小学校1年生のように見えました。
これから少しずつ調教は厳密で厳しくなってきます。
競技馬としての素質もわかり始めるので今まで以上に真摯に対応して行く必要があります。

2010/11/26 23:30:53 | リンク用URL

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