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Feb
20
2011
ちょっと歩けば新鮮な水が飲め、時間になれば美味しい餌が配られる。
つかず離れず仲間も一緒にいて、雨風をしのげる場所もある
そんな広場で1日中のんびりとしていたい。
放牧地の馬達を見ているとそんな様子が伝わってくる。
若い頃ははしゃいで走り回ることもあるが、それも数分のことでまたのんびり。
馬は自然に近い状態にしておくとなんとも静かな動物だ。
騒動があるとすれば雄同士が力比べをするときくらいで、
馬は普段レージーなのである。
レイニングはこういった馬の性質をうまく利用しながら調教を行う。
馬と約束事を確立させていくのに、「プレッシャーとリリース」という作業をして、
これを何回となく くり返しながら馬を作っていく。
代表的なのはハミ受けを作るときで、
手綱を引きハミをかけてそれに対して馬が譲れば手綱をたるませて馬に自由を与える。
この時のハミをかける作業がプレッシャーにあたり、手綱をゆるめるのがリリースである。
同じ事は脚にも言えて、
脚の合図(圧迫)に対して馬が体を動かせば、同時に脚を使うのを辞めそれでいいのだと馬に褒美を与える。
このプレッシャーとリリースはなにも拳と脚だけにとどまらず、
馬の動き全体に対しても行う。
例えばストップを教えているときなどは、
好ましいストップができるまで馬に対してガチャガチャと働きかける(プレッシャー)。
何回かストップ、ガチャガチャをくり返しちゃんとストップをした瞬間に馬を休め褒美をあげる(リリース)。
この乗り手のリリースを馬は「待ってました」言わんばかりに、自分がたった今したストップの形と結びつける。
ストップを重点的に教えているときは、良いストップの直後その場で下馬をすることもある。
下馬によって、馬は乗り手から完全にリリースされるわけだ。
馬は基本的になにもされたくない動物で、人に乗られたときは何もされない瞬間を絶えず求めながら動く。
たとえば極端な例として、
乗り手の足を柵と自分の体の間に挟んで止まってしまう馬。
こういった馬は本当に巧妙で、ちょっとしたきっかけで柵に寄ったら今まで蹴ってた乗り手の足(プレッシャ−)が動かなくなり(リリース)これよし!と覚えてしまう。
この最たる好ましくない例としては、初心者を乗せた馬が何回でも立ち上がるのを見たことである。
その馬は振り落とそうとかハミにビックリして立ち上がっているのではなく、騎乗者が拳を使おうとするとスーッと立ち上がるのである。
乗り手と馬のやりとりをよく見ているとなるほど、
乗り手は脚を使うでもなく馬が立ち上がる度に拳を前に出し結果的に馬に褒美(リリース)を与えている。
馬にしてみれば自分が立ち上がる動作とハミのプレッシャーの解除が結びつき、
立つということは美味しい作業となるわけだ。
こんなところにもプレッシャーとリリースは関係しているのだと妙に感心してしまった。
自分が馬に対して知らず知らずに与えた影響で問題が生じた場合、
「ほっておいて欲しい」
という馬の心理の観点から見なおすと、不思議なくらいコミュニケーションが上手く行くことがある。
2011/02/20 10:40:33 | リンク用URL
Feb
07
2011
アメリカでは人間と馬の理想的な関係を説明するのに、 Respect という言葉を使うことがある。
辞書を引くとこの場合に一番当てはまりそうな訳としては、
「尊敬する、敬う、尊重する、重んずる、関心、注意」などでその他にも色々と書いてある。
だがそういった会話をした本人に、
「それではRespect というのはどういう意味なのですか。」
と質問した場合すぐには答が出て来ないのではないかと思う。
ましてや Respect を日本語に訳して馬と人の関係を説明するとなると更に難しい。
だけどこの単語の中にはとても大事な意味が沢山含まれているような気がする。
真に理想的な馬と人間の関係を考えながら、Respect とは何なのか考えてみたい。
(あくまでも)私から見た馬に求める人に対しての Respect だが、思うにただこれだけだ。
「人に注意を向けてくれることと、人を信頼してくれる」 である。
この気持ちが馬の中にあったら、その馬は人を Respect していると感じる。
後はなにを教えようが, 人がその状態を保てれば、自然とそっちの方へ行ってくれるような気がする。
だが、円馬場で馬と作業をしているときや放牧地に馬を捕まえに行くとき、あるいは乗馬しているときなど、
人を見ない、人に注意を傾けない、あるいは人を認識しない馬は「要注意」と自分に言い聞かせる。
様々なケースがあるので、一言で説明するのは誤解が生じやすいがこのような状態の時は意に反することをされやすい。
そして、このような心理状態の馬をいきなり調教する方向へもっていくのは避けた方が無難である。
(その前段階のステップを踏むべきという意味)
それでは、人に求める馬に対しての Respect はどのようなことが含まれるべきなのだろうか。
ほとんどの場合、Respect は馬から人に対してあるべきという感じで使われるが私は逆ではないかと思う。
馬に対してリーダーになれとホースマンの間ではよく言われる。
馬のリーダーになりたければ、馬から Respect されなければならず、
Respect されるにはまずは人が馬を Respect(相手の立場を考える)する作業から始めなければならないと思う。
それには沢山の項目をクリアーする必要がある。
・扱い、乗馬において馬に信頼してもらう。
・怖がらせることなく馬に対して影響することができる。
・馬と強引ではなく上手にコミュニケーションを図ろうとする、あるいは工夫している。
・柔軟性をともなった決断力を持つ。
・性格、年齢、健康状態、段階など馬の状態に合わせたトレーニング、扱いをする。
・自分だけ先走りせず、その馬の能力やリズムに合わせたトレーニング、乗馬をする。
・意のままにならなくても感情的にならず、辛抱強く, 優しく, 統一性をもって応対する。
・馬の本質や習性を理解するよう努力をしながら接する。
馬を Respect しようと思うと、その他にも沢山でてきそうで挙げたらきりがない。
端的に言ってしまえば、人にとって都合の良い馬との関係を作るには
人間は馬より賢く、馬より上手でなくてはならない。
だから課題が山盛りある。
(馬にとって都合の良い人間との関係は、餌、寝床、放牧などを含めた過ごしやすい環境を提供してもらい後はほっておいて欲しいようだ・・・。)
長い間悩みながらたどりついた私なりの結論は、
賢いホースマンは馬と和しながら馬の協力を得ることができるということだ。
そしてそれを可能にするのは、その人の創意工夫と働きかけ、自分への修練を絶えず怠らない姿勢だと思う。
結局そんなことを考えていると自分ではなにか馬に教えているつもりだが、
実際 教わっているのは自分の方だと気がつく。
きっと馬との関わりは永遠にこんな風なのだろう。
2011/02/07 8:21:53 | リンク用URL
Jan
25
2011
馬と毎日向き合って生活していると彼らの習性など面白い発見が度々ある。
私は馬が好きというより(もちろん好きだが)すごく興味があると言った方が良いのかも知れない。
馬が放牧地や馬小屋でやっている行動を観察するのが楽しい。
人が馬に乗っている時も、見ていると自然と頭の中にその人と馬の会話が見えてきて興味深いものがある。
その観察好きが今はけっこう役に立っていて、馬について指導する上で助かっている。
私が指導するときは、よっぽどのことが無い限りその人に替わって馬に接するあるいは乗るということはしない。
レッスン中ほとんどの場合、なんとか当事者同士(その人と馬)のコミュニケーションがはかれるように手助けするだけだ。
なぜなら自分の感覚を通して分からない事は、そこから先へ進むことができないと信じているから。
その様などちらかというと高みの見物的指導方法に非常に助けとなるのが、人と馬が影響し合う様子を見ることである。
例えば、こんな事があった。
新馬調教を研修生が行っていたときのことだ。
今まで、鞍を乗せることに問題がなかった馬なのに急にそれができなくなったというのだ。
グリーンウエイランチでは新馬調教の初期には、馬房や洗い場に繋ぐことをせず、円馬場で引き手を持った状態で一番最初を除いてはほとんど1人で鞍付けをする。
馬を繋がないのはまだ鞍の装着に充分慣れてない状態で腹帯を締めると、後ろへ下がったり前へ出たりして馬が動く場合が多く危険だからだ。
また、腹帯を鞍が回らない程度に締めたあと引き馬をして、また締めるという動作を行いやすくするためでもある。
日頃から研修生には馬に(懲戒などをして)怖い思いをさせないよう伝えてあるので、その加減が分からず腫れ物にでも触るような感じで接する時がある。
その様な人の気持ちが動作に現れ下手すると裏目に出る場合がある。
そこで知っておくと非常に助けになるのが、馬が学習する時のメカニズムである。
私は鞍を乗せられなくなった馬に対して、研修生に再び試みるように伝えその様子を観察した。
馬は研修生が鞍を乗せようとするとスーッと体を動かして遠ざかる。
よく見かけるシーンだ。
特に鞍が怖くなくなり、だけど乗せられるのは嫌だ・・・、と馬が思う?時に起こる場合が多い。
馬が動くのはさほど問題ではないのだが、問題はその時の研修生のとった行動だった。
馬が動いた(遠のいた)ときに研修生は馬のその動作と共に鞍を下げてしまう。
きっと鞍というマイナス要因で馬の神経を逆なでしまいと、気遣ってのことだったのだろう。
だけどこの優しさ?は馬をしつける上では逆効果となる。
馬からすれば自分の動くというその行動で鞍は自分から遠ざかってくれる。
その一齣の事象をコンピューターのようにインプットしてしまうのである。
そうなると後は、条件反射の様に馬は鞍に対して反応するようになる。
特に馬が賢くて、なおかつあまり人間に協力的でない性格だと嫌なことから逃げる方法は、この1回で充分覚える。
この件に関しては、研修生にあわてず急がず、諦めずに一連の動作で鞍を馬の背に乗せることによって解消してもらったが、ちょっとした人間の思い違いで馬との会話の歯車が外れるエピソードだった。
(僕の方が上手かも〜〜、ブヒヒッ!)
2011/01/25 21:42:38 | リンク用URL
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