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2011
ちょっと歩けば新鮮な水が飲め、時間になれば美味しい餌が配られる。
つかず離れず仲間も一緒にいて、雨風をしのげる場所もある
そんな広場で1日中のんびりとしていたい。
放牧地の馬達を見ているとそんな様子が伝わってくる。
若い頃ははしゃいで走り回ることもあるが、それも数分のことでまたのんびり。
馬は自然に近い状態にしておくとなんとも静かな動物だ。
騒動があるとすれば雄同士が力比べをするときくらいで、
馬は普段レージーなのである。
レイニングはこういった馬の性質をうまく利用しながら調教を行う。
馬と約束事を確立させていくのに、「プレッシャーとリリース」という作業をして、
これを何回となく くり返しながら馬を作っていく。
代表的なのはハミ受けを作るときで、
手綱を引きハミをかけてそれに対して馬が譲れば手綱をたるませて馬に自由を与える。
この時のハミをかける作業がプレッシャーにあたり、手綱をゆるめるのがリリースである。
同じ事は脚にも言えて、
脚の合図(圧迫)に対して馬が体を動かせば、同時に脚を使うのを辞めそれでいいのだと馬に褒美を与える。
このプレッシャーとリリースはなにも拳と脚だけにとどまらず、
馬の動き全体に対しても行う。
例えばストップを教えているときなどは、
好ましいストップができるまで馬に対してガチャガチャと働きかける(プレッシャー)。
何回かストップ、ガチャガチャをくり返しちゃんとストップをした瞬間に馬を休め褒美をあげる(リリース)。
この乗り手のリリースを馬は「待ってました」言わんばかりに、自分がたった今したストップの形と結びつける。
ストップを重点的に教えているときは、良いストップの直後その場で下馬をすることもある。
下馬によって、馬は乗り手から完全にリリースされるわけだ。
馬は基本的になにもされたくない動物で、人に乗られたときは何もされない瞬間を絶えず求めながら動く。
たとえば極端な例として、
乗り手の足を柵と自分の体の間に挟んで止まってしまう馬。
こういった馬は本当に巧妙で、ちょっとしたきっかけで柵に寄ったら今まで蹴ってた乗り手の足(プレッシャ−)が動かなくなり(リリース)これよし!と覚えてしまう。
この最たる好ましくない例としては、初心者を乗せた馬が何回でも立ち上がるのを見たことである。
その馬は振り落とそうとかハミにビックリして立ち上がっているのではなく、騎乗者が拳を使おうとするとスーッと立ち上がるのである。
乗り手と馬のやりとりをよく見ているとなるほど、
乗り手は脚を使うでもなく馬が立ち上がる度に拳を前に出し結果的に馬に褒美(リリース)を与えている。
馬にしてみれば自分が立ち上がる動作とハミのプレッシャーの解除が結びつき、
立つということは美味しい作業となるわけだ。
こんなところにもプレッシャーとリリースは関係しているのだと妙に感心してしまった。
自分が馬に対して知らず知らずに与えた影響で問題が生じた場合、
「ほっておいて欲しい」
という馬の心理の観点から見なおすと、不思議なくらいコミュニケーションが上手く行くことがある。
2011/02/20 10:40:33 | リンク用URL
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