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Apr
08
2012
(2012年3月)
3月31日の朝は、前夜から雨が降ったり止んだりの天気が続いていた。
ちょうど馬に飼い付けをする時間に雨足が強くなったので、
家で1時間ほど様子を見ることにする。
天気図では、その頃には雨雲がいったん切れる模様だった。
朝は起きるとカーテンを開けながら、台所に行くのが習慣となっている。
台所のシンクに立つと、そこの窓からバーンを含め、
放牧地のほとんどが見渡せるようになっているので、
やかんに水を入れながら、外にいる馬達の様子をチェックする。
(窓から見える景色)
昨日、妊娠検査をした馬はもう1頭の妊娠馬と並んで青草を食べていた。
いつもと変わった様子は見られない。
(ほらね、やっぱり子馬は産まれてない。来週から産室に移動すれば充分間に合いそう・・・)
と思う。
グリーンウエイランチの馬達の基礎を作ってくれてる、
ガナーズモールという名前の繁殖牝馬は、
予定日より2週間早く出産した年があった。
朝、台所から外をのぞいたときに、
いるはずのない子馬がちょこんと彼女に寄り添っていて、
ドッカ〜ンと度肝を抜かれるような経験をしたことがある。
予想だにしない、見たことのない馬が1頭増えていて、
一瞬、夢かと思ったほどの衝撃を受けた。
その日はよりによって4月1日のエープリルフール、
2007年の春だった。
バーンには研修生と一緒に立派な産室を作ったのに、
グリーンウエイランチをオープンして初の馬の出産がこんな始末だ。
自分の読みの甘さを反省しながら、
この冗談のような話を記念に、
子馬の登録名に April という一文字を入れた。
後にその経験がちょっとしたトラウマになってしまい、繁殖牝馬の臨月には、
(まだ生まれてない)という期待?と(放牧地で産んでしまったという)
不安の入り混じった複雑な気持ちで、朝一番の外の景色を見ることになる。
このところ、出産や種付けでドタバタと気忙しくしていたので、
この日の朝は、ちょっとした時間の余裕を嬉しく思い、
ゆっくりニュースを見ながら朝食をすませた。
食器をシンクへ持っていきがてら、また放牧地の様子を見る。
青草を食べている2頭は以前と同じだった。
ところが、シェッド(出入り自由な小屋)でなにか様子がおかしい。
(シェッド、中央に壁があり両側から出入りできるようになっている。)
雨が降ると、先に出産した繁殖牝馬は子馬を連れてシェッドで雨宿りをするが、
今朝はどこに行ったのやら、子馬を1頭で置き去りにしている。
母馬は子馬が生後一ヶ月くらいになると、
多少自分から離れた所へ居ても視界に入っていれば心配しなくなるが、
生後2週間と経っていない時期に、親子が一緒でないのは変だった。
頭の中にいくつもの疑問が浮かび、
なにが起こっているのか分からず、胸騒ぎがした。
目をじっと凝らしてシェッドの中の子馬を見ていると、
昨日の様子とは違い動き方が変である。
体調が悪い感じで、頭を下げてヨタヨタと歩いている。
(大変だ! 具合が悪いんだ!)
この子馬は産まれて2日目から下痢をして、
3日間治療を受けたことがある。
(お腹をこわしてしまった子馬。 お尻の周りが黄色く汚れています。)
その間も元気で、下痢も軟便程度のものだったが、
子馬の下痢は急速に体力が弱るので軽視できない。
それに下痢による脱水症状は命取りにもなる。
完治したと思ったが、それに関係した体調不良なのか・・・、
それとも怪我でもしたのだろうか。
外はまだ雨が降っていた。
私は、大急ぎでウインドブレーカーに長靴とキャップを身につけ表へ出た。
2012/04/08 0:45:19 | リンク用URL
Apr
04
2012
2012年3月
今年もありがたくやって来てくれた春。
私にとって1年の中でこの時期は、色んな意味で気分が高揚する。
小規模ながらも繁殖を手がけてるグリーンウエイランチは、
オープン以来一番忙しい春を迎えた。
タイミングとは不思議なもので、
なぜか今までで一番出産の頭数が多い今年に限って、
私は1人で牧場の仕事を切り盛りしていた。
周りで見ている皆さんはさぞかし大変だろうと、同情してくださりとてもありがたい。
・・・が、大変ながら本人この状況を結構エンジョイしているのだ。
・・・というか、1人で色々とこなしている内に、エンジョイ以上の感動を覚えるまでに至った。
ポカポカと暖かい日が増えてきて、冬も終わろうとしている頃は、
(3頭のお産、1人では心細いなぁ・・・、無事に生まれてくれればいいけど・・・)
とお腹が大きくなってくる放牧地の牝馬を見ながら思っていた。
だが、手伝いの人がいてもいなくても牧場のことを決断していくのは自分だけ。
そして、人の数に関わりなく何かが起こるときは起こるのである。
そんな現実が突如、身に降りかかってきたのが3月31日の出来事だった。
3月2日が出産予定日だった初産の繁殖牝馬がいる。
この馬、予定日を半月過ぎても全然おっぱいが張ってこなかった。
たいがい出産の3〜4週間前くらいから、ふっくらしてくるものだが、
餌をあげる度に、後ろ足の付け根に2つあるおっぱいをチェックしても
期待に反して何時もそこはペッチャンコ。
それを見て、お産はまだまだ先のことだと思った。
繁殖の経験が豊富な牧場の娘さんにその事を話してみたら、
「今の段階でおっぱいが張ってこなかったら、子馬が生まれたとき大変よ。
人の手でミルクをあげなくちゃならなくなる。 ものすごい労働だから・・・」
馬の出産が遅れる話はよく耳にしたことがあるので、あまり心配はしていなかったが、
空のおっぱいで子馬が生まれることもある、という話しに大慌てをしてしまった。
動物界でもそんな事があるのだ・・・、。
私は獣医さんまですっ飛んでいき、
彼女のすすめる母乳を作る促進剤のような薬を買い、
すぐさまその日から与え始めた。
それは「ドンペリドン」というお酒の様な名前で、
大きな注射器の入れ物にゼリー状の薬が入っている。
目盛りがついていて、毎日5ccを馬の口に押し込んでいくタイプのものである。
1本は5日分あり、それを与え始めて3日も経つと、
少しずつおっぱいがふっくらとしてきたのにはビックリした。
効果がなくては困るのだが、 「薬とはすごい!」 とあらためて思う。
そう言う本人は自然流が好きなのでアンチ薬派なのだが・・・。
ここは背に腹は代えられないので、バランス良く考えることにした。
人手のないところにきて、もし子馬をミルクで育てるはめになったら
何か月とかかる人工哺乳で私の体力は持たないだろう。
そしてなによりも子馬には、お母さんが与える母乳がすごく大切である。
とくに出産直後の初乳は栄養が豊富で、
病気に対する抵抗力をつけてくれるので子馬には欠かせない。
獣医書には、初乳が出過ぎて子馬が飲む前にしたたり落ちているときは、
ほ乳瓶にためて与えるようにと書いてあるほどだ。
(生まれたての子馬、お母さんから愛情たっぷりの初乳をもらってます。)
ドンペリドンの1本目が終わってもまだおっぱいの張り方が足りないので、
また獣医さんまで足を運び2本目を与え始めた頃、今度は変な不安にかられた。
予定日を過ぎて3週間以上経っているのに、牝馬のお腹はそれほど大きく見えない。
(お腹の子は生きているのだろうか・・・。)
そう疑問に思い始めると寝ても覚めてもその事が頭から離れず、
他の繁殖牝馬を種付けに連れて行くとき、
その妊娠馬も一緒に獣医さんに診てもらうことにした。。
細くてなが〜い腕を持つ女医さんは、
馬のお尻の穴にそのか細い腕を二の腕まで突っ込んで、
「うん、大丈夫。 今、子馬に触れたけど、なんかグルって回転したみたい。
多分、近いと思うわよ。」
と言ってくれ、ほっと安堵のため息。
その女医さんが、
「この前はね、わたしが診察した牝馬、次の日に子馬を産んだのよ。」
そばで手伝っている人に女医さんがそんな事を言ってるのを
ボーッと外の景色を眺めながら聞いていた。
その時私は、牧場へ戻ったらしなければならない事を考えている最中だった。
晩から翌日にかけて天気が崩れるので、仕事の段取りを考えていた。
その日のことをちゃんと終わらせておかないと、用事は次から次へと押してくる。
牝馬の診察を終え、牧場に戻って連れ帰った3頭をトレーラーから下ろし、
放牧地に振り分けた。
3頭のうち2頭は空のお腹で今年種付けする馬。
この馬達は一緒に小さめの放牧地へ連れて行く。
お腹の子馬が無事だと確認できた例の牝馬は、
牧場の中で一番奥にある広い放牧地へ連れて行った。
ここは自宅からもっとも近くて馬の様子が家からでもよく見える。
そこには今月下旬に出産予定の馬と10日前に出産した親子馬が放牧してある。
トレーラーから放牧地までの長い距離を引き馬しながら、
さっき聞いた獣医さんの話を思い出していた。
(この馬に限って明日生むことはないよ・・・、まだ体の準備ができてないし・・・
どう見てもまだだよね・・・)
一日千秋の思いでこの数週間を過ごしてきたので、
仔馬は永遠に生まれてこないような錯覚にも陥っていた。
心の中でブツブツと勝手な独り言をつぶやきながら、
放牧地に到着すると牝馬の首をポンポンと叩いて
「良かったねー!。 子馬は元気だってよー。」
そう話しかけながらムクチをはずし、放牧地を後にした。
2012/04/04 2:04:26 | リンク用URL
Mar
20
2012
競技に向かってレイニングホースを再調教をするにあたり、
馬に外方レーンに対して抵抗なく反応する感覚を思い出してもらう
というのも重要な作業の1つでした。
レイニングホースに乗り慣れてない人は、
どうしても両手を使って手綱操作をすることが多く、馬はガイドが悪くなってきます。
これはサークルをするときライダーが内方の手綱を引っ張ってしまうために起こり、
結果として馬は外方のレーンのタッチに鈍感になってきます。
レイニング競技の多くのマニューバーは、外方レーンの指示によって演じられます。
サークル、スピン、ロールバックはその最たるものです。
(ここではフリースタイルなどで演じられるブライドルレス(頭絡を使用しない)の話は除きます。)
乗り手は外方レーンを馬の首に当てたとき、スーッと引っかかりなく譲ってくれる
(手綱が馬の首に触れたら逆の方向へ動く)感覚を手に感じられることが大事です。
この時も前回のブログで説明させて頂いた、アライメントがとても大切になります。
手綱が触れても馬の動きがスムースでないときは、肩をしっかりと動かしてもらう必要があります。
レーンをタッチすると同時に、一緒に外方の脚を前の方で使ってみるとよいでしょう。
それでもまだもたつくようであれば、ここで初めて外方レーン、外方脚と一緒に内方レーンも使い、
馬のガイドに対してのレージー(重い)な反応を改善してみましょう。
アライメントの調整や後駆を動かす運動の感覚が分かるまでには、
それなりの騎乗時間が必要ですが、ガイドに関しては初中級者でもできることがあります。
もちろん実際に乗っている馬がどの程度仕上がっているかにもよりますが、
様々なレベルの人馬に効果的な方法です。
乗り手がレイニングホースに乗った時によくやってしまう運動として、
同じ大きさのサークルを駈歩で何周も永遠としてしまうというのがあります。
私は個人的に、この運動はあまり意味のあるものではないと思っています。
もちろん、レイニングの基本ともいえるサークルを運動中に練習するのは良い事です。
ただメリーゴーランド状態のサークルの連続は、
馬を退屈させるだけでなく馬の集中力を損なうのも事実です。
なぜならサークルの連続運動は、時間と共に馬が惰性で運動するため、
馬の注意が乗り手から離れることになりやすいからです。
そのような状況を避けるため、乗り手は工夫しながら運動に変化をもたらし
馬の意識を騎乗者に向ける必要があります。
乗り手がレイニングホースに慣れてなくてもお勧めでき、
人馬共に無理のない運動として私がレッスンの時によく使う運動があるので
参考にして頂ければと思います。
それは、人馬が大きなサークル(早くない)を安定してできる状態になったら、
小さいサークルを大きなサークルのなかにいくつも取り入れる運動です。
これは比較的簡単にでき、馬の注意をビギナーでも引くことのできる効果的な運動だと思います。
例えば大きなサークルを描きながら4分の1周ごとに小さいサークル(大きなサークルの1/2の直径)
を取り入れたり、また長方形などの図形を描くときに、四隅でサークルを入れることをすると良いでしょう。
注意したいのは、この運動もやはりパターン化せずに小さいサークルを描くこともあれば、
また同じ所を通る時サークルは描かずそのまま通過する、などの方法をとります。
(小さいサークルへ左の手綱を馬の首に当てながら右に向かってガイド(ガイドイン)しています。)
(ガイドインしているときにアライメントが崩れた場合、手綱をピックアップして調整します。)
(馬が安定してきたのでスピードを上げています。
わずかに顔が外へ向くので内方(左)の手綱をピックアップしてます。)
(ガイドが良くなると、スピンもスムースになってきます。)
馬は記憶の天才です。
騎乗者が知らず知らずにやっている癖をあっという間に覚えてしまうので、
その様な馬の習性を頭に入れて運動する必要があります。
このようにパターン化させず、フェイントを掛けるような運動は、
馬に 「次はなんだろう。」 と待つ姿勢をもたせる効果があります。
良いレイニングホースは、
馬が勝手に動くのではなく乗り手の指示を(スピード、ガイドなど全てにおいて)
待てる、あるいは待ってくれる馬だと思います。
この大小のサークルを描く運動は馬のガイド(外方手綱に対しての反応)が改善されるばかりでなく、
乗り手がレイニングの感覚を身につけるのにも役に立ちます。
短時間で機敏な動作を乗り手の扶助に従って次々と行うレイニングの競技の特徴を考えると、
運動に変化をもたらし、馬にそのような運動の環境に慣れてもらうというのはとても大事な作業の1つです。
2012/03/20 9:02:11 | リンク用URL
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