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Oct
27
2015
馬を扱うときや乗馬する時に大前提として私が大切にすることは、
馬との気のやりとりです。
これなしにして、馬のトレーニングは不可能だと言っても過言でないほど、
馬と気持ちで繋がることは大事だと思います。
馬と気のやりとりをすると、信頼関係、人馬一体感、相互のリスペクト、連帯感、等々、
どんな言葉を使っても表現しきれないほど、とても奥の深いものが生まれるような感じがします。
この表現に値する感覚は、ある程度の鞍数を重ねてくると、
外乗や馬場での軽い運動の中で感じられる瞬間もあると思います。
ところが、競技に出場するときや競技馬のトレーニングは、
普段の乗馬とはまったく違う局面を持っていると言えます。
それは、馬が普段しない体の動き、
自然体ではやらない動きを人為的に作る、あるいは馬にさせるという事です。
馬からしてみれば、できればやりたくないことなので、
この部分で馬との関わりはさらに深遠、またその反面困難になりがちです。
飽きっぽい性格の私が今まで馬を辞めずにいたのは、
もしかしたらこの部分をもっと掘り下げたかったのかも知れません。
乗馬の楽しみを味わうだけであれば、これほど馬には夢中にならなかったと思います。
どうすれば乗り手も馬も、楽しくストレスフリーで運動できるのか。
どうやったら馬とケンカせずに、自分の意志を馬に伝えることができるのか。
様々な思いが、競技へ向けて馬をトレーニングするときや、
完成された馬に乗るときに心をよぎります。
そして、日常の試行錯誤の中で私なりに少し分かってきた内容が、
今回のブログになりました。
これからシリーズで公開していくブログは、基礎を重視する人や、
馬との関わりを真剣にとらえる人には共感できる部分もあると思います。
理屈ばかりこねていても仕方ないので、
実際の運動としてどうすれば馬と良い関係が築けるのか、
またそうするために私が感じる馬の心理にも時折ふれながら
ブログを継続していきたいと思います。
そしてブログから、
「乗り手や馬を扱う人の心のあり方が馬の動きや馬の行動を反映する」、
ということを馬の背にまたがったときや馬を扱う時に
常に心に抱いて頂けるとありがたいです。
馬との連帯感を作る。
「人馬一体」という言葉は、人と馬の理想的な様子を表現するのによく使われますが、
言葉のニュアンスが神々しすぎるので、あえて連帯感と言わせてもらいます。
連帯感は、意志の疎通が乗り手と馬の相互の了解のもとにできたときに
初めて生まれてくるものだと思います。
そのような状況下では、乗り手は馬に伝える手段をしっかりと踏まえているため、
馬の動きは強制されたものではなく、馬が人の意志をくみ取って動きます。
人が馬を相手に言葉による意思の疎通を図るのは難しいので、
乗馬時の馬との会話は主に乗り手の脚、拳、音声によって成り立たせることができます。
乗り手の脚、拳、音声が馬との会話において言葉の役割をすると考えた場合、
それは、人が頭で理解しやすい馬に対しての会話手段だと思います。
なぜならこの方法は人が理論的に理解できるからです。
それとは別に、乗馬中に人が意識しないのに馬には伝わるものがあります。
それは、乗り手のからだ全体から馬が感じるものです。
これを簡単に人間同士の会話で例えると、
相手が発した言葉の意味そのものより、表情やしぐさから無意識に相手の本意を感じる。
その様なものだと思って下さい。
ここで言う、馬が感じる「からだ全体」とは、
乗り手の緊張やリラックスしているときの体の状態、
そして乗り手の気や感情です。
馬と意志の疎通を試みるとき、直接的な作用を馬に与える脚、拳、音声と同様に、
乗り手のからだ全体の状態は、馬に大きな影響力を持つので無視できません。
(左スピンをしているところです。連帯感が生まれると、早い動きの中でも馬はリラックスして体を動かすことができます。)
2015/10/27 4:53:49 | リンク用URL
Oct
21
2015
以前シリーズにして書いた 「メンテナンス」のブログですが、
そのまま尻切れトンボ状態にしてあるのがずっと気がかりでした。
私が感じる馬との真の関わりはどういうものなのかを心に描くため、
その内容は抽象的になり、それを分かりやすく言葉に表現するために
例をあげて内容を構築しようとすると先への展開が難しくなってしまいます。
下書きをしては消し、消しては書いてを繰り返しているうちに、
最後の公開から1年半が経ってしまいました。
「メンテナンス」の最後をくくった馬と良い関係を作るコツとして、
「馬に怖い思い、嫌な思いをさせない。」 と書きました。
ただ、そうは言ったもののそれだけでは実践で役に立つことは、
何も説明したことになっていません。
日々馬と関わる様々な場面で私がいつも心にしているのは、
「安全」 を重視しながら、自分の経験や馬から得た知識を活かして
人馬ともにハッピーな関係を築き上げる事です。
乗馬で人がパートナーにするのは、大動物で力と破壊力があります。
馬に対しての接し方を間違えると、人はとんでもない怪我を負う可能性があります。
また、相手が大きくても人が注意を怠ると馬に怪我をさせたり、
彼らの精神に大きな傷を与えることも簡単にできます。
そのような現実が絶えず乗馬や馬のトレーニングにはついてまわるので、
人と馬が安全で平穏な毎日を送れるように気をつけながら、
私は馬と真摯に関わるようにしています。
そこで大切にしているのは、お互いの信頼関係を築き上げるということです。
信頼関係を作るには、まず人が馬を知り、馬には人を知ってもらうことが必要不可欠です。
牧場をたちあげてから毎日、
好む好まざるとに関わらず馬を飼育管理し、若馬を育て、
その馬たちにお客様を乗せて乗馬レッスンをしてきました。
時には辛抱を強いられるような地味な作業の積み重ねでしたが、
その単調な時間の流れの中で驚くほど沢山の気付きをもたらされたことも事実です。
私の日常の実践に基づいた体験や、そこから得た知識を
これから「ホースセンス」 と題してブログに書いていきたいと思いました。
そこには、馬から教わったことや自分が感じた馬たちの心の中を
アトランダムに綴っていきたいと思います。
まずは 「ホースセンス 1」 を公開する前に、
以前書いた 「メンテナンス」というブログの1から12までを
端折って先に再公開させていただき、
その準備運動の後に 「ホースセンス」を繋げたいと思います。
僕たちこんな顔してても人と似ているところが沢山あるかもしれないよ!
2015/10/21 0:45:47 | リンク用URL
Sep
01
2015
この前久しぶりに獣医さんを呼んだ。
・・・と言っても、馬の具合が悪くなったわけではなく、
若馬の歯を抜いてもらうためだった。
馬の口の中には、ハミを入れても上手い具合に歯に当たらない隙間があるが、
ちょうど調教を始める頃、上の奥歯の手前に生えてくるウルフティース(wolf teeth)
という歯がある。
それは、他の歯と比べるととても小さなものなのに、
ハミ受けを作る時に馬によってはウルフティースにハミが当たり嫌がることがある。
馬にしてみれば、金属製のハミがカチカチと歯に触れるので気持ち良いはずはない。
そのため馬がいつまでもハミを受けることに抵抗することもあり、調教は先に進まなくなる。
可哀想だけどこのウルフティースを抜歯するのが人と馬にとって得策というわけだ。
この日は、4頭を抜歯してもらうことにした。
なにか緊急の事態が起こった時のために、3件ほど馴染みの獣医さんがいるが、
最近では同じ獣医さんばかり来てもらうことが多い。
この先生は、往診専門で主に大動物を相手にしている。
とても良識的で腕も良く、馬を熟知していて余分な薬は処方しないし、
必要ない処置もしないので、フィーリングがよく合う大好きな獣医さんだ。
何よりも助かるのは、助手にいつもレスラーのような大きな男性を連れてきてくれるので、
私が馬を抑える必要がないため安心して任せられる。
今回もその先生に会えると楽しみにしていたら、
車から降りてきたのは、初めて見る若くてスラリと背の高い女医さんだった。
体格の良い男性と、研修医のような女性を伴ってきた。
彼女と話をしているうちに、私の好きな大先生は
最近クリニックを立ち上げてすごく忙しいということが分かった。
難しい処置ではないので、新入りの女医さんをよこしたというわけだ。
私は、その女医さんの前にまず一頭目を連れてきた。
手慣れた様子で、鎮静剤を馬に打ったあと口の中を見て一言。
「超巨大だわ!!」
女医さんは、1頭目の馬のウルフティースを見るなりそう叫んだ。
助手を務める男性が馬の口を開けて女医さんのサポートをする中、
金属でできている管を馬の歯にあてがい何やら揺すぶったり、
グギグギと押している。
見ている私まで痛くなるような荒治療だ。
かなり手こずりながら、
「こんなに大きなウルフティースは見たことがないわ。」
と繰り返し、唸りながらやっと1本抜いた。
そしてもう片方の抜歯に取り掛かったが、
器具の管の直径が小さすぎて歯の根元まで届かない。
「これ以上大きな道具は持ってきてないので今日はこの馬は無理だし、器具が必要であればオーダーということになります。」
と言われてしまった。
そして次に連れてきた2頭目は、歯が1頭目と同じように大きいばかりでなく、
その隣の奥歯にピッタリくっついていて管の壁が入り込む隙間すらない。
イメージ通りの処置ができないため、
新米の女医さんの焦りが伝わってきて気の毒に思ってしまったが、
大先生だったら何とかしたのではないかと内心ガッカリ。
2頭目を諦めた女医さんは、次の3頭目を診て、
「そうそう、これが普通なのよ。でもこれでも大きい方よ。」
とつぶやきながら左右とも難なく抜歯することができた。
そして最後の4頭目はというと、
「ウゥ〜ン、この馬も歯が巨大過ぎる。2頭目と同じ状態で抜くとしたら寝かせなきゃならないし、器具もないので、今日は無理だわ。」
と残念そうに言った。
「もしかしてこの馬たち血筋が同じなんじゃない。」
と女医さんが言うので、
「確かに4頭の内3頭は、お母さんが母と娘という形でつながっているけど、
以前、大先生が抜歯してくれた兄弟はなにも問題はなかったんですけど・・・」
とちょっと不満気につぶやいてしまう。
いずれにしろ、この女医さんの判断に従い諦めるしかなかった。
そして、助手を務める男性と女医さんの、
「ウルフティースが奥歯に触るほど奥にあるのならたぶんハミの邪魔にはならないだろう。」
という意見に同意するに至った。
確かにこの馬たちは、ハミに不慣れな様子は見せたが、
強く抵抗することはなかったからである。
支払いを済ませて獣医さん一行が帰った後、
鎮静剤から覚めた馬を放牧しながらふと気が付いたことがあった。
(そういえば、巨大なウルフティースを持っている3頭は、同じ種オスの子供たちじゃない。)
母親サイドのことばかり考えていたので、女医さんに質問された私は、
父親が同じだとはその時は思いもつかなかった。
ちょっと辛口な言葉を女医さんに言ってしまったことを反省しながら、
遺伝とはまか不思議なものだと感心した出来事だった。
抜歯されたウルフティース。 左がスーパーサイズで右はアベレージサイズ(笑)
2015/09/01 10:45:50 | リンク用URL
GREENWAY RANCH
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