![アメリカ・ノースカロライナ州にある日本人向けの牧場「グリーンウェイランチ[GREENWAY RANCH]」ブログ](../img/head.gif)
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2015
先週後半から気温が上昇し、
いよいよ夏の到来かと思わせる気候になってきた。
気温が高くなると動作が緩慢になってくる馬たち。
放牧地では、草を食んでいない時はボーっとしているばかりで、
たまに走ることもあるが、それはアブから逃げ回っている時くらいだ。
先月生まれた仔馬もゴロっと横になっている姿をよく見かける。
寝る子は育つ、とはいうものの幼い体には気温の上昇は疲れるようだ。
9時を過ぎてもまだ薄っすらと明るいこの時期、
汗をしたたかかいて8時近くに作業が終わると、
さっと冷たいシャワーを浴び、冷えたビールを飲むのが楽しみになっている。
シュワーッと喉を通る炭酸の刺激に、頭がパッとリフレッシュできる。
よほどの猛暑でない限り、私はエアコンは使わない。
涼しくて快適な室内に慣れてしまうと、
作業をするために、外へ出たときの温度差はさらに厳しいものになるから。
昨晩は、夜になっても気温が下がらず、
さすがにうちわで顔を仰ぎたい衝動にかられた。
その感覚は、当時まだ中村勘九郎を名乗っていた歌舞伎役者、故中村勘三郎の
ニューヨーク公演を脳裏に浮かばせ、また見てみたいと思う。
中村勘三郎の追悼番組として放映したものを、友人が録画して送ってくれたことがあった。
「夏祭浪花鑑」 という演目で、
話は夏の暑い盛り、祭りが催されている最中に
義父を殺めてしまうという婿の話がハイライトとなっている。
古典芸能には無関心だったが、
里心からかアメリカに来てから歌舞伎に興味を持つようになった。
この演目鑑賞をきっかけに面白いと感じたのが始まりだ。
歌舞伎を知らないアメリカ人にも楽しめるようにと、
芝居にニューヨーク公演のためのアレンジがいくつも組み込まれていて、
見ていくうちに引き込まれていった。
歌舞伎のセリフは初心者の私には分かりにくかったが、
物語が夏の時期というのを印象付けるため、
多くの登場人物が、色々な形のうちわや扇子を見事な所作で扱い、
物語の流れより役者のその動きが妙に記憶に残る舞台だった。
時は11時近く。
役者をまねてうちわでパタパタと仰ぎながら
クライマックスに向けて盛り上がってきた画面に見入っていたら、
遠くの方で、 「ピュイヒヒヒィーン」 と馬の鳴き声が聞こえた。
少し高音でまだ幼い声に仔馬のものだと分かった。
「お馬の親子は仲良しこよし〜♪」 と童謡のごとく
たまに仔馬が母馬から離れてしまうと、
仔馬は鳴きながら一目散に母馬の元へ駆け寄る光景を目にすることがある。
今夜もそんなことだろうとあまり気に留めずまた画面に見入っていると、
また 「ピュイヒヒヒィーン」。
そしてそのあとすぐに 「ピュイヒヒヒィーン」 と何回も連呼している。
今まで聞いたことがないような仔馬の必死な叫び声に、
なにかあったのだと胸騒ぎがした。
すでに寝間着姿だったのを作業用の服装に着替え、懐中電灯を手に外へ出る。
空には満天の星が輝いていたが、お月様は見当たらず周囲は闇だった。
外を照らすには力不足の懐中電灯を放牧地の方向へ向け歩いていくと、
仔馬が走り回って立てた砂埃が淡い光に照らされて霧のように見えた。
そこには、母馬を含めて3頭の繁殖牝馬がいるはずなのに、
埃の中で動き回っているのは小さな仔馬のシルエットだけだった。
電柵をくぐって放牧地に入り懐中電灯を四方へ向けてみるが、
大人の馬はどこにも見当たらない。
「チビちゃん、どうしたの。 ママたちはどこへ行ったの。」
と仔馬に声をかけたら、聞きなれた声に反応して珍しく私の後を付いてくる。
一人にされてよっぽど心細かったのか、
頼りになるのはこの人しかいない、と言わんばかりに後を追う様子が可愛かった。
それにしても仔馬がこれだけ騒いでいるのに、誰も仔馬の元へ駆けつけないのは変だ。
広い放牧地を奥へと進みながら、良からぬことばかりを想像してしまう。
(もしかして柵が壊れ、遠くへ行ってしまった馬たちが帰ってこられないのでは・・・)
平常心なら浮かばない、そんな馬鹿なことを考えながら、
(これは車のヘッドライトを使って馬たちを探すしかない。)
と、家に戻って車に乗り込みハイビームのライトで徐行していたら、
ドドドドドドドドッーと数頭が走る足音ともに、すごい砂煙が上がった。
その中に探していた3頭の馬の影を認めることができ、
馬たちは双方めがけて走りめでたく合流した。
私は放牧地の奥まで車で移動し、
柵の破損がないか確認したあと馬たちの様子を改めて照らしてみた。
仔馬は母親から乳をもらい、そのそばに他の2頭が立っている、
それは、いつもと変わらぬ風景だった。
仔馬の母親はいままで7頭の仔馬を立派に育て上げたベテランである。
とても賢く、仔馬を守る本能は抜きんでている。
まだ生後1か月の仔馬を置き去りにして遠くへ行ってしまったのは解せない。
想像するなら、他の2頭と一緒に草を無心に食べていくうちに距離が開いてしまったものと思う。
仔馬は、グッスリと寝込んでいて母馬が移動したのに気が付かず、
お腹が空いて眠りから覚めたときにハタとたった1頭で残されたのが分かったのだろう。
冷静に考えれば笑えるような出来事だが、夜に心配させるようなことは止めてほしい。
でも後になって、私も子供のころ同じようなことがあったのを思い出した。
買い物好きの母親とデパートを一緒に歩いていて、
迷子になったことは最低でも2回は記憶にある。
確か、まだ幼稚園にも通ってなかったような年齢だ。
その時の恐ろしくパニックになった時の心境は、この夜の仔馬も同じだったのだろう。
2015/06/16 9:34:36 | リンク用URL
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