![アメリカ・ノースカロライナ州にある日本人向けの牧場「グリーンウェイランチ[GREENWAY RANCH]」ブログ](../img/head.gif)
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2015
ついこの前まで、周囲では風邪を引いている人がとても多かった。
私は、牧場から出ることがないので大丈夫だろうなんて安心していたら、
どこにでも流れる空気は私の元へも菌を運んできたみたいで、
しばらく体調不良が続いた。
今回流行った風邪は、回復に時間がかかった。
最初は、悪寒や胃のムカムカ、倦怠感が強く、
ノドが痛んだり、声がでなかったり、人によっては寝込む場合もあり症状は色々。
私の場合は、ドライアイから始まり、PCに向かっているのが辛いほどの倦怠感から始まった。
一か月半くらい前に症状が出て、今はボツボツ馬に乗れるまでに回復してきた。
寝込むほどにならなかったのは幸いだったけど、
風邪の症状が出始めたころ、解決を要する問題が重なって、
ボーっとして集中力のない頭を酷使しなくてはならなかったのには参った。
体力が弱っているところへダメ押しで起こるプロブレム。
一つ片づけると、追っかけるようにまた一つ問題出現。
「えぇ〜、今度はなに・・・」
山積みの宿題を抱えて気力はドンドンなえてくる。
牧場も馬も全部投げ出し、逃避したくなる心理にまた追い込まれてしまった。
そんな時期に、アルファルファの入荷があった。
一つ400キロくらいある乾草が、
通称18ウィーラー(18個のタイヤ)と呼ばれている大型トレーラーに
57個積まれて近所の牧場へ到着、その内の10個を買うことにした。
今回もジミーおじさんの協力を得て、彼は自分のトレーラーを牽引し現場に駆けつけてくれた。
乾草を大型トレーラーからジミーおじさんのトレーラーへと移動し、
購入分をグリーウェイランチに運ぶという段取りをとった。
(全長がとっても長い18ウィーラー)
(グリーウェイランチの道路沿いに駐車したトラックからアルファルファを降ろしています。
最初に行ったこの方法は、交通をブロックしてしまうため今回は別のやり方をしましたが、
イメージとしてはこのような作業です。 いつも大変ありがたいジミーおじさんの協力です。)
トレーラーからトレーラーへトラクターで乾草を移動し終わり、
少しの間みんなで立ち話をしていたら、見慣れない男の人が参加してきた。
近くの農家さんかと思ったが、服装が妙に派手だ。
まるで蛍光塗料で染めたような眩しい新緑色のベースボールキャップをかぶり、
それと同じ新緑色のシャツを着て、その上にオーバーオールという姿だった。
色はともかくとして、農家さんだったら衣服は多少汚れていていいはず、
なのにパリッと洗いたてのよう。
一体誰だろう・・・、と思っていたら話題がタイヤのパンクになったときにその人が発言した。
「以外かもしれないけど新しいタイヤは物をよく拾うのでパンクしやすいんだよ。」
コメントを聞いたそのとき、乾草を運んできたトラックの運転手だと分かった。
なるほど派手な色の服装は、
トラックを路肩に寄せて外へ出なくてはならない時の安全対策なのだ、
・・・と思った。
よく日に焼けた顔に笑みを浮かべて話をする表情はとても穏やかで、
つい私はつまらない質問をしてしまった。
「どうやったら長い運転時間を退屈しないでいられるのですか。」
アメリカに来てから数年間、競技会へ出向くことが多い時期があった。
その頃の、平均8時間というホーストレーラーを牽引しながらの
長い移動時間が苦痛だったのを思い出していた。
トラックの運転手は、柔らかい眼差しで私の顔を見ながら、
「退屈することはまったくないよ。
同じ景色はないし、走っているといつもなにか新しいことがある。
毎日が新しい日で、いつもエキサイティングだよ。」
と言った。
その言葉が意外で、感心してさらに私は質問を続けた。
「今回は、ここまでどれくらい時間がかかったのですか。」
「金曜日の夜にイリノイを出発して、だいたい平均1日600マイル(約960キロ)をいつも目標にして運転するから、2日半だよ。もう少し早くこれたけど、途中仮眠する場所(レストエーリア)が混んでいて他のところを回ったので少し余分に時間がかかった・・・無理は禁物だからね。」
アルファルファがノースカロライナに到着したのは、
月曜日の午前中だったので気の遠くなる距離だ。
その長い、長い距離を黙々と運転する。
私には考えられない作業だ。
でも、運転手の言葉から単純に見える長距離トラックの仕事はとても奥の深いものだと感じた。
話に聞き入っている私に、運転手は更に続けた。
「配送する荷物は色々なものがあって、今回の乾草は運んでいていい匂いだったよ。以前、別の種類の牧草を運んだけど、それは臭かったなぁ。 僕は、全米48州どこへでも輸送をするよ。 遠くはアラスカまで行ったこともある。 それと、同じ場所へは2回以上行くことはないよ。」
そう語る彼の表情は、始終 優しく穏やかで
長距離輸送という男っぽい仕事をこなす人からは想像できないオーラを感じた。
物資を輸送する道中では色々なことが起こるはずだ。
悪天候や事故で行程を阻まれることもあるだろうし、
トラックの故障やタイヤのパンクというアクシデントもあるはずだ。
それなのに、彼は自分の仕事の全てに愛情を感じているようだった。
達観できている人とは、こんな人物のことを言うのだろうか。
人生に目標は大事だけど、
先の事ばかりに意識が行ってしまって今を味わうことのできない自分と比べてしまう。
あくせくと動き回っているわりには、空回りが多く、
心にゆとりのない最近の自分自身を持て余していた矢先だった。
トラックの運転手には、目的地へ品物を運ぶというゴールがある。
私も牧場にまつわる仕事一つ一つを終わらせるという日々のゴールがある。
ゴールまで到達するという行為は、内容に違いがあるにしろ真髄にある、
「完結させる、終わらせる」 という意味では変わりはない。
そのゴールまで、行程を楽しみながら進むのか、
それともイライラ焦りながらただただ終点を目指して駆けていくのか、
どちらが良いかと自分に問いかけてみる。
そして、トラックの運転手と話をしながら、
彼がいかに自分の仕事に誇りを持っているかを知った。
私は、自分の仕事を誇りに感じているだろうか・・・。
ふとそんなことをしみじみと考えさせられた、トラック野郎との短い会話。
そこからは、今の自分を気づかされる不思議なものがあった。
2015/05/08 23:51:04 | リンク用URL
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