アメリカ・ノースカロライナ州にある日本人向けの牧場「グリーンウェイランチ[GREENWAY RANCH]」ブログ

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Feb

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2015

天使の降臨 (人との関わりの切なさ)

以前、「天使の降臨」というタイトルを付けたブログで
牧場の立ち上げから今に至るまでのグリーウェイランチにまつわる、
色々な人との不思議なめぐり合わせを書いたことがあった。

思い起こせば、牧場が今成り立っているのは沢山の人たちの力添えの結果で、
その時に感じた感謝の気持ちを綴ってみたかった。

ただ、今では学びのための良い機会を与えられたと思えるが、
牧場には助けになる人ばかりが訪れたわけではないことも事実だ。


私は牧場建設を始めるまでかなりいい加減に生きてきて、
そんな人間が乗馬施設を四苦八苦しながらも立ち上げられたのは、
我ながら驚異に感じる時がある。

そのいい加減さは牧場を作ることで正され、
そして、ここの成長とともに自分自身も育てられている感じを受ける。

今日、ようやく牧場の建設中に経験した苦労を語れるまでになったが、
もし、渦中で弱音を吐いていたら、私はその大変さを嫌というほど実感するに至り、
すべてを途中で投げ出していたのではないかと思う。

畑だった更地に馬小屋とゲストハウスを同時進行で作る行程は、
怒涛の中を泳ぐような厳しく激しい体験だった。
一人で背負うにはあまりにも重い荷で、つぶされそうになったこともある。

工事の終了は、融資を受けた銀行の指定する期限を大幅に過ぎ、
私自身も大工仕事を加勢するため資材の調達と運搬をした。

そして、ほっておくと少し作業をしては帰ってしまう大工に張り付いて自分でできる作業はするという、男性でも大変と思うような事もした。
二つの建物を作る材料に私の手が触れなかったものはないと言えるほど、
必死になって工事に関わった。

そうでもしない限り大工は、やれ家族の具合が悪いとか、他で何かを頼まれたとか、
夜中じゅう鹿狩りをして寒くてしょうがないとか、風が強すぎるとか・・・、
様々な言い訳をしては仕事を途中で中断した。
何を言っても糠に釘で、どう対応して良いのか散々悩んだ。

私自身は一生懸命やっているつもりでも、銀行の担当者ははかどらない工事を見て、
大工から甘く見られているのではないかと指摘された。

事実、家族の具合が悪いという話を聞いて同情したのはいいが、
それから数日後に入院しているはずの義父が突然工事現場を見学に来て、
大工の嘘が発覚したこともあった。

銀行員の言葉は胸を刺すものがあり、自分の甘さを痛感した。
それでも、強いことを言って大工の機嫌を損ね仕事を投げ出されても困るし、
また体躯の大きな男相手に威圧感を覚え、ハッキリとものが言えなかった。

自分の力不足にイライラと悔しい感情を抱きながら、
銀行と大工の間に挟まって、労働とストレスの毎日から心身共に疲労極限の時期を過ごした。

状況に負けそうになった時は、とにかく将来に焦点を合わせ牧場の完成を夢見て、
その暁には、建物を眺めて感涙にむせぶだろう自分を想像して頑張りとおした。

ところが、晴れて牧場が形を成した時、
以外にも私の心には感動という気持ちは生まれてこなかった。
もしかしたら工事の苦労はほんの序の口で、その先に何かがあるのをどこかで気付いていたのかもしれない。

ただ、工事の記憶で一度だけ嬉しかったのは、
ダラダラと仕事をする大工にいよいよ堪忍袋の緒が切れて、

「馬房を期日までに完成させないと顧客を失うことになり、ビジネスに多大な損失を受けるので
その時は責任をとってもらいますからね。」

・・・と大嘘をついてリーダーの大工を脅し、馬房をやっと完成してもらった時だった。

まだ木材の匂いが漂うような馬小屋に入った馬たちの姿を見たときは至福が心を満たし、
その日は遠く日本から見守ってくれてる友人に自分の心中をメールした。

大工に関係した体験は、「飴と鞭」の使い方を私に教えた。
プロ意識に欠け一筋縄ではいかない職人には、嘘や脅しも使いようだ・・・、と悟った。
悲しいけれど、一人で大海に出てしまった自分を守るためにはそうせざる負えないときもある。

世の中では自分の観点で常識ととらえられるものが必ずしも他人の常識とは限らない、
そんなしごく当たり前のことにやっと気が付いたのだった。

P1000022.JPG


DSC00992.JPG



ゲストハウスとバーン。
これが完成して、銀行の担当者が写真を撮りに来たとき、
「今まで見てきた牧場の中で一番きれいだよ。」
と称賛してくれた。













2015/02/04 4:28:34 | リンク用URL

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