アメリカ・ノースカロライナ州にある日本人向けの牧場「グリーンウェイランチ[GREENWAY RANCH]」ブログ

2025.November

Sun

Mon

Tue

Wed

Thu

Fri

Sat

      

1

2

3

4

5

6

7

8

9

10

11

12

13

14

15

16

17

18

19

20

21

22

23

24

25

26

27

28

29

30

Backnumber

Image Index

みどりのThat’s録・(馬旅2020年 No. 05号) みどりのThat’s録・(馬旅2020年 No. 05号) みどりのThat’s録・(馬旅2020年 No. 05号)
みどりのThat’s録・(馬旅2019年 No. 04号) みどりのThat’s録・(馬旅2019年 No. 04号) みどりのThat’s録・(馬旅2019年 No. 04号)
みどりのThat’s録・(馬旅2019年 No. 04号) みどりのThat’s録・(馬旅2019年 No. 03号) みどりのThat’s録・(馬旅2019年 No. 03号)
みどりのThat’s録・(馬旅2019年 No. 03号) みどりのThat’s録・(馬旅2019年 No. 03号) みどりのThat’s録・(馬旅2019年 No. 02)
みどりのThat’s録・(馬旅2019年 No. 02) みどりのThat’s録・(馬旅2019年 No. 02) みどりのThat’s録・(馬旅2019年 No. 02)
みどりのThat’s録・馬に魅せられて (馬旅2019年 創刊号01) みどりのThat’s録・馬に魅せられて (馬旅2019年 創刊号01) みどりのThat's 録 (ウィリー)
みどりのThat's 録 (ウィリー) みどりのThat's 録 (ウィリー) みどりのThat's 録 (ウィリー)
ジョイのつらつら日記(ビフォーアフターのアフター) ジョイのつらつら日記(ビフォーアフターのアフター) ジョイのつらつら日記(ビフォーアフターのアフター)

Oct

02

2014

観戦日記 (後)

身を乗り出して見たくなるようなその馬の演技は、
マニューバーの動きそのものもすごかったが、
スピンの前のヘジテート(一呼吸置く場面)では、
微動だにしないで頭を下げたまま乗り手の指示を待ち、
その様子から、馬の従順なメンタリティーが感じられ健気でさえあった。

スピンの後のサークルも同じように頭をぐっと下げたまま、
乗り手の手綱操作は必要ないような完璧さでガイドもスピードコントロールも演じる。
大きく早いサークルから小さくゆっくりとしたサークルへ移行する時は、
ハミが馬の口に触れることはなくそれは見事だった。

レイニングの競技でもっとも大事とされている、
「馬が自ら動いている様子」がうかがえる見本的なパフォーマンスだ、
・・・とそう感心していた次の瞬間だった。

スローの右サークルから左サークルへ移行するリードチェンジで
まさかと思われるようなキックアウトが起こった。

それも今まで見たことがないような見事なキックアウトで、
馬の姿勢はぶれることなく外側の後肢だけがパッと高く蹴り上げられた。
駈歩のリズムは乱れず、まるで演技の一部でもあるかのようなスムースな動きだった。

今までの流れからは想像できない、反抗と見なされるペナルティーを出したこの馬は、
耳を背負ったり尻尾を振るなど、乗り手の扶助や走行することへの不快感を表現することなく
キックアウトしたため妙に感心してしまった。
大抵なにか「悪さ」をする馬は、それを予言するような表情をすることが多いからだ。

おまけに大きなペナルティーポイントが生じるキックアウトを
馬は左リードから右リードへ移る2回目のリードチェンジでもやってのけた。

キックアウトは厄介な競技中の馬の動作で、
一瞬のうちに起こるため乗り手はどうすることもできないばかりか、
馬が一度それを覚えるとこの癖を直すのはとても難しい作業となる。

なぜなら、準備馬場やホームグランドではやらないのに、
競技中にこの癖を出すケースが多いので再調教がしにくい。
特に競技慣れした馬は、今が「本番」というのを分かっていてやることが多い。

この時は2人のジャッジによって審査されていたため、
一回のキックアウトでペナルティーは10点となった。
左右合わせて20点のペナルティーは、
他のマニューバーでどんなに素晴らしい演技をしても穴埋めできるものではない。

もし、仕上がったレイニングホースを買う場合、
この手の馬の癖は気を付けるべきだと思う。

理由は一つ、試乗中に目を見張るような動きができたとしても、
競技馬場で良い結果を出すのはギャンブルに近いものがあるからだ。

この天国と地獄を見た衝撃的な走行から
私はレイニングの難しさをつくづく考えさせられた。

最後のクラス、オープンフチュリティーで上位のスコアを出した馬たちの演技を思い出しても、
その完成度は私がレイニングを知り始めた15年前から比べると明白な違いがある。

馬場で演じる競技馬たちのトップラインは丸くなり、顎を譲り、頭を下げて走行している。
一昔前のように背を張ったような感じでスライディングストップをする馬たちはいない。

DSC01402.JPG


(1985年のレイナーマガジンの表紙)

DSC01806.JPG


(2014年、最近のレイナーマガジンの表紙)


その背景には調教技術の進歩もあると思うが、
馬がこれだけの姿勢を3歳までに作れるようになるには
大変なトレーニングを受けているはずである。

当然、落ちこぼれていくものも多く、
能力があっても体を壊してしまう馬もそこには多くいる。
そして、無事にフチュリティーで好結果を出せた馬たちだが、
競技馬としての生命は決して長いものではないのが現実だ。

若馬がまだ体も出来上がらず、
精神的にも幼い時期から厳しい調教をせざる負えないレイニング競技のシステムは
どう考えたらよいのだろう。

今は昔のようにカーボーイ的な荒々しい調教は見直されるようになってきたが、
競技中の馬の動きがかなり馬術的になり、好成績を出すには完成度の高さが必要となってきた今、
私の知るここ15年間の進歩を見ても、3歳でフチュリティー(新馬戦)があるという
調教期間の短さは無理があるように感じてならない。

もう少し馬たちを熟成させながらコツコツと仕上げていけるような競技システム、
そしてトレーニングをする者は、馬のウエルフェアを考える余裕が持てるような
環境作りを願うのは間違った感覚なのだろうか。

翌日の作業のことを考えると、
早く帰宅して休みたいと思いながらも最後まで見入ってしまった競技会。
オーブンフチュリティーは、11時半に終了しそそくさと帰路へ。
アメリカの暗い高速道路を運転しながら、また私の考え過ぎる悪い癖が出てしまった。













2014/10/02 23:48:42 | リンク用URL

Page Top