アメリカ・ノースカロライナ州にある日本人向けの牧場「グリーンウェイランチ[GREENWAY RANCH]」ブログ

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2014

天使の降臨 (ジミーおじさんの提案)

ジミーおじさんがグリーンウェイランチに乾草を届けてくれるときは、
季節に関係なく、いつも長袖のシャツにファーマーの、
(そしてもちろんホースマンの)ユニフォームともいえるジーンズ姿だ。

頭にはキャップ、夏場はストローハットをかぶっている。
寒い時はシャツの上にベストとジャケットを重ね着して、
靴はスニーカー状の革靴という格好が定番だ。

DSC01453.JPG


(ジミーおじさんとお孫さんのケーシー)


ところがこの日、
車から出て来たジミーおじさんは、なんとオーバーオールを着ていた。
それに長靴をはいて、ズボンの裾はしっかり長靴に押し込んでいる。

私は、SOSの電話をしたとき、
水道管の漏れている部分を確認して欲しいと頼んだだけなので、
すっかり作業モードの服装で表れたジミーおじさんには、
ビックリさせられた。

そして、手にはキャンバス地でできている大きな袋をさげていた。
そこには水道管修理に必要な、道具や部分品がゴロゴロと入っているではないか。

いつも、段取りの良い几帳面な人だと思っていたが、
まさかこれほどとは想像していなかった。

私は、ジミーおじさんの「力になろう」という、
真摯な姿勢に平伏する思いだった。

近づいてくるジミーおじさんに、迷惑をかけることを詫びながら、
むき出しにした2つのコックと水道管を指さした。

「これから母屋へ行って水道管の栓を開けるので、漏れている場所を確認してもらえると助かります。 見つかったら、電話をください。」
私は、母屋に待機して電話があったら栓を閉めなおすつもりでそう言った。

そして、ジミーおじさんに背を向けて歩き出した時だった。
「プシュー!」という音がしたので、
何事かと後ろを振り返ったら、
一つのコックから勢いよく水が飛び出しているのが見えた。

私は、一瞬起こっている事が理解出来なくて忙しく頭を巡らした。
そして思わず、 
「えぇー! もう、なんでそれを教えてくれないの。」

少しおどけながらそう言ったが、心は恥ずかしさで一杯だった。
「そうか公共用の水を通せば分かることなのに・・・、まったくバカだよね。」

ジミーおじさんは、
私が気づかないうちに公共水と井戸水を切り替えるコックをひねったのだった。

落ち着いて考えればジミーおじさんがやったことは思いつくはずなのに、
パニック状態になっていた私の頭は、冷静に判断する余裕がなかった。

私の言葉にまったく表情を変えず、
「ここにひびが入ったんだね。」

ジミーおじさんは、コックを見つめながら
「これは全部取り替えないとだめだよ。」
とつぶやいた。

(やれやれ・・・、やっぱり大変な作業になってしまう。)
心の中でため息をつきながら、私はジミーおじさんの次の言葉を待った。

「どうしたい。」
その言葉が何を意味しているのか分からずにいたら、
「公共水と井戸水の切り替えを考えなければ、
コックを切り離して両方の水道管の切り口に蓋をしてしまえば修理は簡単に終わるよ。」

そう言いながら、
ジミーおじさんは、持ってきた袋の中をゴソゴソと探し始めた。

丁度サイズの合う蓋が都合良く2つあったので、
「そうね、緊急の場合はハイドラントとゲストハウスの水道の蛇口をホースで繋げば水を確保できるから、切り離すのが手っ取り早いかも・・・。」
と私は自分の考えを伝えた。

そうしたら、ジミーおじさんは2つの蓋を手に持ちながら、
むき出しになっている水道管にまた目をやって何か考えているようだった。

「せっかくここまで水道管を延ばしているから無駄にするのはもったいないな。 
コックと水道管、それと水道管同士を繋ぐジョイントを買わなくちゃならないけど、
それほど高い物じゃないし切り替えられるようにしておいたほうが便利かもしれないよ。」

私は、ジミーおじさんが提案した水道管の修理は大変な作業だと思った。
私の知っている水道管のつなぎ方は、カプラーという部品を使い、
2本の水道管をカプラーに差し込むとき、両方が充分しなることができるように、
かなりの距離で水道管を地上に出さなければならない。

ジミーおじさんは、水道管を指でさしながら
「ここで切断して、コックを取り付け、
その先に新しい水道管を繋いで馬屋に走っている管にジョイントで繋げば大丈夫だよ。」
といとも簡単に言っている。

私は説明を聞きながらなんとか頭の中で修理のイメージを描こうとしたが、
どうしても自分が知っている方法とはかみ合わなかった。

この先、さらに水道管にそって必要となる穴掘りの作業を考えたら、
ジミーおじさんの方法は、あまり良い案ではないような気がした。

「どうしたい・・・。 自分のやりたいようにしたらいい。」

ジミーおじさんは、いつも口数の少ない人だ。
自分の考えを人に押しつける事もしない。

ただ、そういう人が何か意見を言うときは、
その内容は、とても大事なことのように感じた。

私はほとんど考えることなく即答した。
「そのやり方に賛成。 地面の中で水の切り替えができた方が楽だし。」

ジミーおじさんは私の言葉をまた無表情に聞いて、
「本当はやっちゃいけないことだけどね。」
とポツリと付け加えた。

それは私も工事をしていたときに大工から聞いたことがあった。
だけど、もし何日にも及ぶ停電に見舞われたら、
馬たちが飲む水の確保は想像を絶する作業となる。
背に腹はかえられないのだ。

ジミーおじさんも禁止されていると知っていても、
その方法を私に勧めている。
きっと、家畜を沢山飼っている農家さんは、
同じことをしているのだろう・・・、と推測できた。

いずれにしろ、
部分品を買いに Lowe‘s というホームセンターに行かなければならない。

ジミーおじさんの言っている部分品を私は知らないので、
日を改めて一緒に行ってくれることになった。

その日は、取りあえず水漏れしているコックを切り離して、
ジミーおじさんが持ってきてくれた蓋で、
水道管の切り口をふさぐという応急処置ができた。

水道管修理の作業は完了したわけではなかったが、
その夜は、あの水を汲み上げるポンプの音から解放され、
馬たちにも普段と変わりなく水を供給できると思ったときの安心感は、
説明しがたいものだった。






2014/02/27 9:06:33 | リンク用URL

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