アメリカ・ノースカロライナ州にある日本人向けの牧場「グリーンウェイランチ[GREENWAY RANCH]」ブログ

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Dec

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2013

祝88歳BD・その瞬間のエピソード

人は、開き直ると腹が据わるものである。
大げさかもしれないが、この時の私もそんな境地に陥った。

(よーし、オルガおばあさまを予行演習なしに馬の背に乗せるのならそれもよし。 男衆、まかせたからね!!)
・・・てな気持ちになった。

私は、事を進めるときエンターが前後に動かないよう、
馬の口元近くで短めに手綱を持った。

もう一方の手でエンターの額を撫でながら、
「怖いことないからね。 じっとしててよ。」
と馬の表情がよく見える正面に立ち、声をかけた。

ふとその時、いつの間にか馬の反対側に回った英子さんの姿が目に入った。
なんと、彼女はバンザイをするような格好でエンターの腰に両手をあて、
上体を斜めにしながら足を踏ん張っているではないか。

英子さんは馬の事はそれほど知らないはずである。
男衆が、オルガおばあさまを馬の背に持ち上げるとき、
馬が横に動かないようにする対応策として、思いついた行動なのか。

それとも誰かにそうするように言われたのか。
理由はどうあれ、私は彼女のそんな姿をみて妙に心を動かされた。

自分よりも相当大きな動物に、体を張って接している。
一体どれくらいの人が、このような行動を取れるであろうか。
馬を知っている人でも、何かあったとき動かずに傍観しているケースがよくある。

英子さんを見て、
人生を体当たりで、自分の思うように生きてきた人はどこか違う。
・・・と納得してしまった。

IMG_1910.jpg


(行動派の英子さん)


私がそんな光景に気を取られ、
エンターから目を反らしていたときだった。

いつの間にか彼は、私の左腕の皮膚を前歯でつまみ、
グッググッと力を入れてきたのだ。

(いったぁ〜〜ぃ!!)、あまりに強く噛むので思わず出そうになった声を押し殺した。
エンターの額にあてていた右手をとっさに馬の口角に持っていき、
指2本を口の中に入れてグニュグニュとかき回したらやっと離した。

いつもだったら、「やられたらやり返す。」
腕を噛ませたまま「10倍返し」の拳固をふるうところだが、
それをすると馬が逃げようと動いてしまうので、
ここはジッと我慢のしどころ・・・、周囲に気づかれないよう静かに対処した。
(ちなみに「10倍」の根拠は、エンターの体重が自分より10倍はあるということで大した理由はない。)

120_2020.jpg


(悪さをしても憎めない、いたずら好きなエンター)


エンターは8歳で、もうとっくに落ち着いてもいいはずだが、
気分が高揚すると甘噛みをする癖がある。
いつまでもやんちゃで、そんなところが可愛いと思うこともある。

本人もやってはいけない行為と充分に承知しているため、
いつもは服の袖を唇でパクッと挟んで引っ張る程度である。

そして、甘噛みの気配を感じたときは、
「だめ!」 とか 「こら!」 と声で叱ると真顔になりなにもしない。

ところが、この時はまったくその気配なし。
私が知らないうちに左腕の皮膚をそっと前歯で挟み、
圧を入れた時に噛まれていると気がついたのだった。

あとでエンター の立場を思えばおかしくなるような話だが、
自分の体を四方人に囲まれて、すごい圧迫感の中、
今までにないような方法で人が自分の背に乗ったわけである。

きっと、その時に感じた不安や動揺を側にいた私の腕を噛むことによって、
発散させたのだろう。

タイミング的に考えると、エンターが私にキリキリと噛みついていた最中に、
オルガおばあさまは彼の背に押し上げられていたようだ。

偉かったのは、事の始まりから終わりまで微動だにしなかったことだ。
エンターはエンターなりにすごく頑張ったのだと思うと、
なんとも健気な胸中を誉めてやらなければならない。

DSC01471.jpg


(名誉の負傷!?)


そんなこんなで、書けば長い時間のできごとのような印象だが、
全てはあっという間に起こったことだった。

エンターが唾で汚した袖をさっと手で払い、
ふと顔を上げた時、オルガおばあさまは晴れて馬上の人になっていた。

「エッ!! いつ?」 と思うほど、
みんなの願いが詰まった目的は、瞬時のうちに達成されていた。




2013/12/04 21:33:28 | リンク用URL

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