アメリカ・ノースカロライナ州にある日本人向けの牧場「グリーンウェイランチ[GREENWAY RANCH]」ブログ

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2013

気落ち

7年前、牧場の工事に明け暮れていたとき、引越しした家の前に小さな2本の苗木を左右に分けて植えた。
記念にと思い、1人でささやかな植樹祭をした。
どんな木なのか、いつもの悪い癖でせっかちな私は一緒に付いてきた説明書を読まずに植えた。
多分、成長したら自分の背丈くらいになるのだろうと勝手に思っていた。

ところが人の予想を無視して家に向かって左側の木は、年月と共にドンドンと伸びて家の屋根のてっぺんに届くほどになった。
それと反対に、右側の木はいつまで経っても私の腰の高さより伸びることがなく、植樹して数年経った一昨年あたりからやっと遅れを取り戻すかのように急に成長しだした。

植物のことは分からないが、やっと根っこがしっかりと張りだして栄養が取れるようになったのかなぁ・・・、
とその成長ぶりを感心しながら喜んだ。

2013年は4月の声を聞いてやっと春らしくなってきた。
3月下旬で放牧地の水桶にうっすらと氷が張ったり、4月4日にはみぞれが降ったりと、このあたりでは珍しく長い冬だった。
雨量も多く北からの強風も続き、やっと大きくなってきた晩熟の木が、風のあおりを受けて少しずつ斜めに倒れてきた。

日が経つにつれ木の傾きはその度合いを増していったので、研修で滞在していた津田さんに相談し、地面に杭を打って木を支えることにした。
最初は、トラクターで木を押して位置を修正するプランで、津田さんに枝を押さえてもらう事にした。

DSC01232.jpg


バケットを上げてガガガァー、とトラクターを前進させると木の枝を押さえている津田さんがなにか言っている。
耳に手をあてて、「聞こえないょー!」とゼスチャーしたら、また彼女が笑みを浮かべながら何か言った。

作業を中断したくなかったが、仕方なくトラクターのエンジンを切って「どうしたの?」と聞くと、
「巣が・・・、鳥の巣がありますよ。」
トラクターから降りてどれどれ、と彼女の手の先をのぞき込むと鳥が静かに巣の上に座っていた。
周辺ではトラクターの騒音や人間がウロウロとしているのに肝の据わった物腰だった。
親鳥の「何があってもここはけして動かない。」という決心が伺えるような姿がとてもけなげだった。

DSC01229.jpg


「鳥の巣に気がついてよかった。 このまま押してたら巣をつぶすところだったよねぇ。」と2人で話をしながら、木にヒモをかけて反対側から引っ張る作戦に変更。
慣れない作業に、あーでもないこーでもないとやっとのことで木を真っ直ぐにしたのは良かったが、反対側にある鳥の巣を見に行くと大変なことになっていた。

事前によく考えれば分かることなのに、木を真っ直ぐにしたことで今度は鳥の巣が斜めになってしまったのだ。
親鳥は可哀想に傾斜した巣に座っていられず、すぐ側の枝につかまっている。
かろうじて1羽のヒナは巣に残っていたが、もう1羽は地面に落ちていた。

困ったことになった・・・、と思いながら落ちたヒナを巣に戻し、傾いた巣を近くから拾ってきた枯れ草でなんとか水平にしたが、その騒ぎで親鳥はどこかへ飛んでいってしまった。

「人が触った巣やヒナに親鳥は戻ってくるかなぁ・・・」と言うと津田さんは、
「以前、雀の子を巣に戻したことがあったけど、親はまたそのヒナを地面に落としてしまいました。」
あぁ・・・こうなったら自然の成り行きに任せるしかない。

気になりながら、その場を離れ夕方まで馬の作業にもどる。
数時間後、仕事が終わって家に入る前にそっと例の木を覗くと、嬉しい事に親鳥がまた巣の上に座っていた。
よかったぁ!大きく安堵のため息が出た。

翌日、親が戻ってヒナを抱いていることを津田さんに話し2人で喜んだものだ。
それからというもの私は朝と夕方、親鳥を刺激しないように遠くからヒナの成長していく様子を楽しみに観察させてもらおうと思った。

ところが数日経ったある夕方、いつもいる親鳥が見えない。
今まで必ず見かけていたので、変に思い木の枝を静かにのけてみるとヒナが2羽巣の上で寝ているように見えた。
でも、よく見るとヒナは息絶えていた。 だから親鳥は巣を後にしたのだ。

そこで腐っていくヒナを放っておく気持ちになれず、巣ごと木の枝から取り出した。
小さなヒナは2羽、体を寄せ合って巣の端の方で死んでいた。

自然界では、無事に成鳥になる確率は少なくても、それも自然の摂理と納得できる。
だけど、このヒナ達は自分がやったことで死んでしまったわけで、2羽を手にとって見ている内に悲しくなってしまった。
それから数日間、寄り添って息絶えたヒナの姿が目に浮かびやるせない気分を味わうことになる。

2013/04/11 5:03:35 | リンク用URL

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