![アメリカ・ノースカロライナ州にある日本人向けの牧場「グリーンウェイランチ[GREENWAY RANCH]」ブログ](../img/head.gif)
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2011
沢山の楽しい思い出を残して、ゴン太は遠くへ旅立っていった。
研修生や、バーンを訪れてくれた人々の心を幾度となく温め、
笑いをもたらしてくれたゴン太はもういない。
その日からしばらくは、朝目覚めたときにゴン太はいない・・・と思い出し、
馬の世話をするためバーンに入ると更にそれが実感させられた。
私の姿を見ると必ず挨拶をしに来てくれた、
愛想の良い猫はいなくなってしまった。
軒下で鳥たちは朝を祝うかのように大合唱し、
馬は早く餌をくれと騒ぎ立てる。
いつも起きたての身体には耳障りな騒音だと思ったが、
ゴン太がいなくなったバーンは不思議ととても静かに感じた。
ゴン太が旅立って5日目にしてネズミが出没するようになった。
覚悟はしていたが、ネズミが出たのが思った以上に早く
あらためてゴン太のありがたみが身にしみる。
理由はわからないがゴン太が死んだその日から、
ハナは3日間ほど姿を見せなかった。
どうしているのか心配になって、試しに餌を置きっぱなしにしたら、
3日目にして夜中に食べた形跡があったが、日中は姿を見せない。
それから2〜3週間ほどは、
牧場を空けることが多くほとんど見かけなかった。
ハナの不在を安心したのか、外では鹿が出没した。

ゴン太のいない空間は、心にスーっと風が吹き抜けるような感じで、
説明できない虚の世界だった。
けれど、現実はその感情に浸ることを許してくれない。
牧場の作業は朝から晩まで肉体労働の連続を必要とされ、
気落ちしていると体は動かなくなる。
動けなくなれば、今度は馬たちが可哀想だ。
努めて気分を高め、馬たちに明るい態度で接した。
動物は人間が想像している以上に敏感である。
私は比喩的に、「馬は人の気を感じる、オーラが見える」
とレッスンのときに説明するが、陽気で優しく、積極的な人が扱っている馬は、
リラックスしてよく言うことを聞くようになる。
沈んだ気持ちで馬たちに「陰」の雰囲気をもたらしたくなかった。
独立記念日のあの日に電話をした友人は、多忙にも関わらず駆けつけてくれ、
ゴン太を失った悲しみの中にも、人の心の温かさを強く感じさせられた。
彼女と一緒に、ゴン太を誰にも踏まれることのない覆い馬場の隅に埋める。
最初は牧場の奥で、林がある静かなところにしようと思ったけれど、
社交家のゴン太にそれは似合わない気がした。

(後で分かったが、この場所は奇しくもハナとゴン太の最初のにらめっこの場所だった)
埋葬した所は、ゴン太が好んで寝転んでた場所のすぐ近く。
私もよく通る所で、そこを歩く時ゴン太を思い出すことができる。
友人がゴン太のために花を持ってきてくれたのでそれを墓に植えると、
ピンク色の花が沢山咲いて明るくした。
夏の暑い盛り、私はゴン太の墓の前を通る度に歩きながら
「ゴン太」 と声をかけた。
疲労がピークに達していた時期で、名前を呼ぶのが精一杯だった。
やっと1週間目にして、ゴン太が使っていた容器に水を入れて墓参りらしい事をし、
私はちゃんとしない事を謝り、ゴン太の作ってくれた楽しい思い出に感謝した。
ゴン太の埋葬以来、初めて墓で手を合わせ、バーンに引き返した時のことは今も忘れない。
その直後に馬房の中を歩いていて目に入った光景にビックリしてしまった。
通路の中央にネズミの死骸があった。
それは、ネズミがそこで死んだと言うより、
何者かによってそこに置かれたように見えたからだ。
なぜなら、めったに見る事のないネズミの死骸は、いつも暗く狭い何かの隙間に限っていた。
それが白昼に、幅4メートルのコンクリートのど真ん中にある。
ハナはまったくネズミには興味ないので、ハナでないことも確かだった。
私は瞬間、ゴン太だ!・・・ゴン太がやったと思った。
スコップでネズミを拾いながら、フッとおかしくなった。
以前、休憩室のドアマットにゴン太がネズミの死骸をよく置くことがあったが、
(まったくもう!なんでこんなところに置くの・・・)
と文句を言いながら、それを片づけたときのことが思い出される。
ゴン太らしい・・・、やりかただと思った。

(ネズミを捕まえる天才、ゴン太)
たんなる思い込みなのかも知れないが、他にも不思議な事があった。
家のコンピューターには、馬に乗っているところを動画にして保存してある。
ある日、事務作業をしていて何気なく開いた動画にビックリしてしまった。
ほとんど無意識になんの目的もなく、動画の一つを開いたときのことだ。
滅多に馬場まで来ることのないゴン太が、馬場の縁を左から右に歩いている姿が写っていた。
最初に何気なく開いた動画の中でゴン太が歩いている、
他のを調べたら、ゴン太はその動画だけにしか写ってない。
ゴン太の姿を見ながら、その可愛い様子にまたフッと心が和んだ。
重なる偶然から、他にもいく度かゴン太を身近で感じるような事があり、
私は次第に楽しくなった。
ゴン太が自分はここにいるよ、とまた自己アピールをしているように思えたから・・。
そういえば、ゴン太のアピールぶりはしつこいほどに熱心だったものだ。
見えない存在を信じない私に、
ゴン太は、
「ここだよ。ここ〜ッ!僕はここにいるよ〜」
と語りかけているように感じた。

別の世界へ行ってからも一生懸命自己アピールするゴン太。
私はいつの間にか寂しさから抜け出し、ゴン太との別の関わり方を楽しむようになった。
そして、思い出の中で今でも心を温かくしてくれるゴン太に、
感謝したい気持ちで一杯になった。
2011/11/07 21:12:08 | リンク用URL
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