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11
2013
2013/03/11 3:08:32 | リンク用URL
Feb
28
2013
以前のブログにも少し書いたことがあるが、レイニングは他の馬術に比べると歴史が浅く、トレーニング方法や競技に関するルールはその短い歴史の中でめまぐるしい変化をたどってきている。
レイニング競技の成り立ちは、カウボーイが馬に乗って牛を追う時の馬の動きを競技化したもので、それ故に大胆でスピード感溢れるものとなった。
競技中の馬は、パワフルでメリハリのある動きで観衆を魅了し、決められた経路を正確に走行しながら、難易度が高い様子がスコアを左右するため、競技に出る馬の調教はかなり過酷なものになる。
私が知る限りでは、レイニングのオリンピック参加を目標に協会関係者が動き出してから、レイニングにまつわるルールはかなり厳密になってきたようだ。
それまでは「何でもあり。」、と言っては語弊があるかも知れないが、競技馬に対して使う薬物に制限はなく、動物愛護の精神からかけ離れた馬への対応もあまり問題視されていなかったような気がする。
オリンピック参加の念願を達成するには、まだクリアしなくてはならない壁が沢山あるようだが、現在レイニングは国際馬術大会に出場する権利を得ることができた。
しかし、それに参加する競技馬に対してのルールは厳しい。
競技馬は、6歳以上でなくてはならず、ジョグテスト(引き馬で速歩をする)などを含めた健康チェックがあり、薬物の使用は禁止されている。
適切な表現ではないかもしれないが、レイニングホースは競走馬のような年齢感覚で扱われるため、国際舞台のルールに合わせた年齢の古馬で、健康で優れたレイニングホースは見つけるのが難しいと言われている。
この現実から、サラブレッドが「経済動物」と言われている使い捨てのような雰囲気を、私はレイニングホースの世界にも感じずにはいられない。
障害飛越を含め、ブリティッシュ馬術に使われる馬達、またスペイン乗馬学校のように芸術的な演技をする馬達は10歳を越える頃からようやく完成されてくるが、馬として生きる寿命は同じなのにレイニングホースはその年齢に達するとガタガタになってしまうことが多い。
その理由はメンテナンス不足など様々だと思うが、1つには若い頃から始められる過度な調教によって酷使された馬体にダメージがでるためだ。
また、レイニングの競技に回数多く出場すると「ショースマート」という現象が馬に起きる事があるためでもある。
これは馬が競技の内容を覚えてしまい、乗り手の合図を受ける前に勝手に動いてしまうことである。
レイニングは競技中の動きを、馬自らやっているように見せるのを妙技とするため(例えばルースレーンでの走行)このような事が起こりやすいのだと思う。
そのような理由からも、国際馬術大会で通用するような、ワールドレベルの馬を捜すは難しいと言われている。
レイニングを馬術とし、その真価を世界に認めてもらうためには育成や調教方法、競技会に関するルールなど、馬との関わり方をさらに深い部分まで掘り下げて考えて行く必要があるのではないだろうか。
せめてフチュリティーが4歳馬の競技となれば、レイニングホースの競技馬としての寿命を長くする助けになるような気がする。
そして、今まで3歳でデビューさせるため、時間に追われながら調教してきた乗り手にとっても精神的な余裕ができ、自然と調教方法や馬に対しての扱いも穏やかになり、事故や故障といった悲劇も少なくなるのではないだろうか。
若い年齢の馬に対して、ごり押しとも言える調教は馬の肉体面だけでなく精神面にも悪影響を与える。
私は、今まで自分が接してきたレイニングホースから、実際に人の扱いにより受ける影響がいかに馬達の心にトラウマを与えてきたかも見てきている。
2013/02/28 9:12:58 | リンク用URL
Feb
10
2013
馬は5歳で成長が終わると聞いたことがある。
自分でも馬の生産を手がけるようになり、その成長度合いを身近に見る事ができるのであらためてそれを実感できる。
まだ3歳、4歳になっても幼い印象が抜けない馬達が、5歳を迎えるあたりから体ががっしりと逞しくなり、精神的にも落ち着いてくるのを経験している。
(グラグラとしている乳歯、下の左から2番目)
(まさに今、乳歯が落ちようとしています。 この馬はちょうど満4歳になったところです。)
幼いときは敏感かつ恐がりのためレイニング独特の強い扶助を使えない性格の馬でも、この年齢になるとそれを受け入れられるようになってきたりもする。
いわゆる遅咲きの馬などはこのタイプである。
2004年のオクラホマフチュリティーを観戦に行ったときのことだった。
友人の馬がある著名なトレーナーのもとで、1次予選スコア220点を出してファイナルに残れそうな勢いだった。
私は仕事の都合でそこにいることのできない馬主に替わって、その馬がファイナルに残ることを願いながら2次予選を観戦していた。
走行経過は良く、ファイナル確定だろうと思って見ていたときのことだ。
その馬はストップ、バックアップのマニューバーで素晴らしいスライディングストップをするところまでは良かったが、バックの最中に腰から砕けて転んでしまったのだ。
あっという間の出来事だった。
当然、結果はスコアゼロで、ファイナル出場はなくなってしまった。
なぜ馬が転んでしまったのかずっと疑問に思っていたが、後にマイクマッケンタイヤーの奥さんにそのことを話したら、
「痛み止めで足の感覚がマヒしていてたぶん自分で自分の足を踏んで転んだのよ。 そういうことがたまにあるのよ。」
というコメントに呆然としてしまった。
私は少し間を置いた後、ずっと心にしまっていた思いをつぶやいた。
「フチュリティーが4歳馬の競技だったらいいのに・・・」
短絡的な自分の意見に、彼女からきっと厳しい返事が返ってくると思い遠慮しながら言うと、
「私も本当にそう思うわ。 フチュリティーは3歳の馬にはきつすぎる・・・」
と予想しなかった言葉がとても意外だった。
なぜなら、彼女のご主人はフチュリティーで優勝することが目標で日々若馬の調教に明け暮れ、このところ毎年ファイナルに馬を残して好成績をあげているからだ。
グリーンウェイランチに来てくれる獣医さんの1人は、アラビアンホースを繁殖している。
トレーナーに預けレイニングの調教を入れて自分でもショーイングするのを楽しみにしている。
話の経緯は忘れたが、あるとき彼から興味深いことを聞いた。
それは、アラビアンホースのフチュリティーは4歳になってからということだった。
また、グリーンウェイランチに来てくれる装蹄師さんは、大手のレイニング牧場を始め沢山のレイニングホースを長年装蹄してきている。
彼とはざっくばらんに話ができるので、ある会話の中でフチュリティーにでる馬の年齢の事をふったら、こんな事を言ってきた。
彼が装蹄に行くある牧場で、馬からはずしたスライディングプレート(レイニングホースの後肢に装着する蹄鉄で、ストップの時に滑りやすくする蹄鉄)を大事にとってあるというのだ。
なにやら名馬が付けていた鉄のことかと思って期待しながら先を聞いていたら、馬がまだ2歳の夏につけていたもので、まるで紙のように薄くなっていてあまりにもすごい(ひどい)ので他の装蹄師仲間に見せるためにとっておいたのだという。
彼は、
「鉄がこれほどまでになるのにどれくらいのストップを馬に要求するか分かるだろう。本当にむごいことをする・・・。」
と言っていた。
その様な若い年齢で沢山のスライディングストップをすれば、馬は売れやすくなるかも知れないが競技馬としての寿命は長くないことは想像できる。
まず飛節がかなりダメージを受けるので、跛行しないようにするためのメンテナンスには苦労するだろう。
この牧場のオーナートレーナーは競技会で良い成績を出しこの地域のオープンクラスではトップを争うが、調教中に馬を死なせてしまうことでも話題になる。
激しいトレーニングのためヒートストローク(熱射病)で調教中に馬が死んでしまうのだ。
ただ、このヒートストロークに関してはこの牧場だけでなく、他でも起こると度々聞くことがある。
幸いにも私が以前いたテキサスとニュージャージーの牧場では馬達のこのような悲惨な場面に遭遇することはなかったが、トレーニング中に起こる馬の事故や故障は数多く耳に入ってきていた。
そしてそのほとんどは急いで馬を仕上げる過程に原因があるような気がしてならないのである。
先に書いたアラビアンホースのフチュリティーが4歳なら、ヨーロッパで行われるレイニングのフチュリティーも4歳だと聞いた。
レイニングの発祥地はアメリカなのでよそ者の私がこんな事を言うのはあまりにも不躾だが、アメリカでもフチュリティーを4歳の馬の競技としてルールを改定することはできないものなのだろうか。
そうなればレイニングにまつわるマーケティングに支障をもたらすのは想像できる。
だが、一見マイナス面が多くあるように見えても、大きな視野をもって見ればプラス面が沢山あるような気もするのだ。
この世界で浅い経験しか持たない人間の夢物語だが、もしフチュリティーが4歳馬の競技になったときのことを考えるとちょっと楽しい気持ちにもなるのである。
2013/02/10 10:27:48 | リンク用URL
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