アメリカ・ノースカロライナ州にある日本人向けの牧場「グリーンウェイランチ[GREENWAY RANCH]」ブログ

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May

19

2013

遅ればせながら、やっと春到来・・・? (その1)

5月12日に今シーズン最後の繁殖牝馬の出産がありやっと一息つける時間を持てた。
なんという安堵感。 
まだしばらくは仔馬や母馬の健康状態に気を配らなくてはならないが、
大きな山場を越え、久しぶりの解放感でほっと肩が軽くなった。

DSC01396.jpg


(2013年母の日、やっとこの日を迎えました。)

母の日に文字通り母になった、この牝馬デューリーにとっては初産だった。
去年、初産の馬を相手に大変な経験をしたため、
その時生じたトラウマのせいでデューリーの出産に関しても予定日1ヶ月前からじわじわとせまってくる緊張感があった。

(去年の出産にまつわる大騒動をブログにしてあります。まだご覧になってない方はこちらへどうぞ! 
ブログのページからBacknumberをクリックしてください。
2012年4月3日(春の大奮闘、おっぱい騒動)から8月22日(春の大奮闘、バトルのエピローグ)の10回にわたって公開されています。)


去年の体験は、馬の出産に関わるとき不安感をもたらすこととなるが、
それとは違うケースで、デューリーは種付けの段階ですでに大変な思いをさせてくれた。

この馬に関しては種付けの作業から妊娠の継続、
そして出産まで心から安心することができない長い道のりとなり、
無事に出産してくれたときの喜びはひとしおだった。

DSC01387.jpg


(2013年4月下旬、いよいよ臨月に入ったデューリー。)

春本番となってきた去年3月23日、
そろそろ繁殖牝馬に種付けをしようとブリーディングファーム(種付け作業をしてくれる牧場)へ2頭馬を運んだ。
1頭はガナーズモールで、順調に発情が来ていた。

ところがデューリーは日を空けて3回馬運しエコーでの検診を受けても、
発情の兆しがまったく見られないとの獣医さんの診断。
自分の牧場で発情を促す薬を7日間打つように指示され、7本の薬が入った注射器を渡された。

最後の注射を打って1週間のち、再び馬運をして検診を受けると、やっと発情の兆しがあるとのこと。
帰宅した後に注射するようにと、今度は排卵を促すための薬を渡される。

そして4月中旬過ぎに馬運をした時は、排卵がもうすぐという段階までこぎつける事ができ、
デューリーを種付けのためにブリーディングファームに5日間預けた。
その間に順調に排卵が確認され、ようやく人工授精によって種付け作業は完了。

種付けが終わった知らせを受け馬を連れて帰り、
更に3週間経過したあと再びブリーディングファームへ馬運をする。
そして晴れて妊娠の確認ができた時は本当に嬉しかったものだ。
ここまで来るのに2ヶ月以上が経過した。

ところが、それからまた3週間後の6月4日のエコー検診で、
なんと胎児の心拍が認められないと獣医さんは言うのだ。

私は心の中で、誤診でありますように、と祈ったが獣医さんは駄目押しをするかのように
「子宮も胎児の成長を示す大きさになってない。」と言った。
彼女はブリーディングマネージャーとも相談をして胎児は生きていないとの判断を下し、
流産の処置をすることになった。

DSC01331.jpg


(左手の平にすっぽり収まるサイズのカメラを持ち、腕を馬の肛門に入れてモニターに映し出された映像を読んでいる所です。)

DSC01329.jpg


(映像が映し出されるモニター。)

胎児の心拍が確認できないと聞かされただけで私は充分なパニックにおちいったのに、
流産処置が必要だと聞いて、頭の中は真っ白になってしまった。
その処置のプロセスを他で聞いたことも見たこともないし、
馬を預けている間に行われるのかと思ったら、今この場でやるというのだ。

獣医さんとブリーディングマネージャーがバタバタと準備をしている間、
私の心の中は憔悴感とも絶望感ともつかぬ沈んだ気持ちでいっぱいになった。

この時期、別の繁殖牝馬3頭の出産が相次いであり、
昼夜不規則な生活の上に、初産で出産した1頭が育児拒否をして大変な目にあった。
そして、それに加えちょうど日本へ送る馬2頭がいくつもの検疫検査を受けなくてはならず、
その手配と馬輸送に関する事務作業で猫の手も借りたいほどに追われていた。

日常作業の他に、普段やり慣れない仕事がいくつも重なったのと睡眠不足で、
この時の私は心身共に疲労困憊の状態だった。
持ち前の気の強さはどこかフワフワと飛んでいき、
馬の側でしゃがんでしまいたいくらい脱力してしまった。

2013/05/19 2:42:07 | リンク用URL

Apr

24

2013

大はしゃぎの仔馬

3月9日生まれの牝の仔馬です。
なかなかのおませさんで、誕生3日目には乾し草をクチャクチャと歯が無いにもかかわらず味わっていました。
馬房に入れてある塩のブロックが大好きで、ひたすら舐めては水をガブガブと飲むので取り上げなくてはなりませんでした。
人間だったら大人になったときかなりの、のんべえになりそう。

走る姿を撮影したくて、放牧地から出したら大興奮。
お母さんの周りを爆走しましたが、カメラを意識してカメラ目線でポーズを取る所などなかなかの大物ぶりです。

http://youtu.be/aabN8INDurE

(上のアドレスを youtube でご覧ください。)

2013/04/24 2:19:13 | リンク用URL

Mar

20

2013

フチュリティーの裏側 (完)

仔馬を観察していると、生き物が持つ本能と呼ばれる仕組みにたくさん気づくことがある。 
誠に生命の神秘とも言えるが、生まれ落ちたその時、最初に覚えることは食物の供給源となる母馬を認識する。

DSC00183.jpg


(誕生直後、まだ立ち上がる前です。)

誕生して1時間としないうちに立ち上がり、母馬に助けられながら乳を飲んだ時点で、母馬と確固たる絆ができる。
いつもの事ながら、仔馬の生きていくための学習能力に驚かされる。

DSC00216.jpg


(母馬と絆ができる瞬間です。)

100_0140.jpg


(誕生1日目は、自分から寄ってきて臭いで情報を得ます。)

仔馬は、誕生して1日目は興味深げに人に近寄ってくることもあるが、2日3日経つと人と一定の距離を保とうとし、近づくと母馬の後ろに隠れようとする。
インプリンティングでもしない限り、仔馬の本能は母馬以外の生き物を要注意と見なすようで、他の物の接近は危険回避の行動へと直結する。 
そこには理屈や理論など入る余地もなく、直ぐ動作として出る。

このような生命存続のための行動は、生きている限り持ち続けるが、個体差はあっても急速に成長する0歳から2〜3歳頃まではより強く働いているように思える。
そして、その時期に経験した恐怖を伴う記憶はかなり根強く後々までとどめる傾向があるようだ。

自分の経験に基づく知識から、私は馬に接するときは確固たる信頼関係を築くように心がけ、性急になにかを覚えさせることはしない。
馴致をする上で、最初は時間がかかるように見えるがその方が失敗なく、また人を信頼する馬は物覚えも良いようだ。

心身共に急速な成長をとげる幼児、幼少期をゆったりとおおらかに育て馬が人を信頼すると、後に本格的な調教に入ったときでもそれに耐える精神の強さも出てくるように感じる。

これは、きれい事をならべて動物愛護の精神にそっているのではなく、その様に育てた方が日常の管理が楽で、グリーンウェイランチに訪れる初心者でも安心して乗馬し扱うことができる馬になるからだ。

だが、今のレイニング社会の現状はこのような育成方法を行うのは難しいようである。
先にも書いたが、馬の競技能力をのばすことに焦点をおきすぎるため馴致や育成、調教を急がなくてはならない状況がそれを可能としないのだと思う。

当牧場の馬たちがのんびりと育てられ穏和なせいもあるが、たまに外から入ってくる馬を管理すると、当惑することが多々ある。
引き馬で立ち上がる、またがると常歩をせずにすぐ速歩になってしまう、馬房の出入りを怖がる、落ち着きがない、人に無関心、馬場でじっと立っていられない、極端な物見や興奮、人を噛んだり蹴ったりする、等。
これらは全部人の扱い方が性急かつ粗雑なために馬がする動作で、ほとんどは恐怖心から起こるものであると言っても過言ではない。

仔馬のことを冒頭に書いたのは、馬本来の性質を説明したかったためである。
彼らは、恐いことからはまず逃げる。 
逃られない場合は、蹴ったり噛んだりして自分を守るのが彼らの本能なのだ。

動物は色々な形で太古の昔から人間と関わってきているが、馬ほど人類の歴史の上で深く関わっている生き物はいない。
介助犬や盲導犬、警察犬など人間のために役目を担っている犬もそうだが、ペットとして飼われている動物とくらべると馬のあり方には大きな違いがある。

人のために労働をするという意味では、馬はこの世に存在する動物の中で群を抜いて貢献度があるだろう。
彼らは人の足となり、畑をたがやし、戦争で戦い、荷物を運び、時には食料にもなり、また体の一部は道具として使われてきた。
大きな体を持っているが、その従順な性質は扱いやすく、人間にとっては万能に利用できる格好の生き物なのではないだろうか。

文明が発達して機械が馬に替わり、馬の用途は昔と大きく変わってきたが、人に貢献しているという意味では今も昔も変わりないように思う。
乗用馬として乗る人に楽しみを与え、競技馬としてスポーツのパートナーとなり、競走馬としてスリルと感動を与え、姿の美しさと存在感で人に癒しを与えてくれる。

今、豊かになった人間が自分達のQOLをさかんに問う時代になったが、人間が多くの場面で恩恵を受けている馬達のQOLを考えてみてもバチはあたらないだろう。
その馬たちに少しでも感謝と尊重の念を持って接してこそ、人間が万物の霊長としての立場を誇れるのではないだろうか。





2013/03/20 1:37:18 | リンク用URL

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