アメリカ・ノースカロライナ州にある日本人向けの牧場「グリーンウェイランチ[GREENWAY RANCH]」ブログ

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Mar

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2013

フチュリティーの裏側 (完)

仔馬を観察していると、生き物が持つ本能と呼ばれる仕組みにたくさん気づくことがある。 
誠に生命の神秘とも言えるが、生まれ落ちたその時、最初に覚えることは食物の供給源となる母馬を認識する。

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(誕生直後、まだ立ち上がる前です。)

誕生して1時間としないうちに立ち上がり、母馬に助けられながら乳を飲んだ時点で、母馬と確固たる絆ができる。
いつもの事ながら、仔馬の生きていくための学習能力に驚かされる。

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(母馬と絆ができる瞬間です。)

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(誕生1日目は、自分から寄ってきて臭いで情報を得ます。)

仔馬は、誕生して1日目は興味深げに人に近寄ってくることもあるが、2日3日経つと人と一定の距離を保とうとし、近づくと母馬の後ろに隠れようとする。
インプリンティングでもしない限り、仔馬の本能は母馬以外の生き物を要注意と見なすようで、他の物の接近は危険回避の行動へと直結する。 
そこには理屈や理論など入る余地もなく、直ぐ動作として出る。

このような生命存続のための行動は、生きている限り持ち続けるが、個体差はあっても急速に成長する0歳から2〜3歳頃まではより強く働いているように思える。
そして、その時期に経験した恐怖を伴う記憶はかなり根強く後々までとどめる傾向があるようだ。

自分の経験に基づく知識から、私は馬に接するときは確固たる信頼関係を築くように心がけ、性急になにかを覚えさせることはしない。
馴致をする上で、最初は時間がかかるように見えるがその方が失敗なく、また人を信頼する馬は物覚えも良いようだ。

心身共に急速な成長をとげる幼児、幼少期をゆったりとおおらかに育て馬が人を信頼すると、後に本格的な調教に入ったときでもそれに耐える精神の強さも出てくるように感じる。

これは、きれい事をならべて動物愛護の精神にそっているのではなく、その様に育てた方が日常の管理が楽で、グリーンウェイランチに訪れる初心者でも安心して乗馬し扱うことができる馬になるからだ。

だが、今のレイニング社会の現状はこのような育成方法を行うのは難しいようである。
先にも書いたが、馬の競技能力をのばすことに焦点をおきすぎるため馴致や育成、調教を急がなくてはならない状況がそれを可能としないのだと思う。

当牧場の馬たちがのんびりと育てられ穏和なせいもあるが、たまに外から入ってくる馬を管理すると、当惑することが多々ある。
引き馬で立ち上がる、またがると常歩をせずにすぐ速歩になってしまう、馬房の出入りを怖がる、落ち着きがない、人に無関心、馬場でじっと立っていられない、極端な物見や興奮、人を噛んだり蹴ったりする、等。
これらは全部人の扱い方が性急かつ粗雑なために馬がする動作で、ほとんどは恐怖心から起こるものであると言っても過言ではない。

仔馬のことを冒頭に書いたのは、馬本来の性質を説明したかったためである。
彼らは、恐いことからはまず逃げる。 
逃られない場合は、蹴ったり噛んだりして自分を守るのが彼らの本能なのだ。

動物は色々な形で太古の昔から人間と関わってきているが、馬ほど人類の歴史の上で深く関わっている生き物はいない。
介助犬や盲導犬、警察犬など人間のために役目を担っている犬もそうだが、ペットとして飼われている動物とくらべると馬のあり方には大きな違いがある。

人のために労働をするという意味では、馬はこの世に存在する動物の中で群を抜いて貢献度があるだろう。
彼らは人の足となり、畑をたがやし、戦争で戦い、荷物を運び、時には食料にもなり、また体の一部は道具として使われてきた。
大きな体を持っているが、その従順な性質は扱いやすく、人間にとっては万能に利用できる格好の生き物なのではないだろうか。

文明が発達して機械が馬に替わり、馬の用途は昔と大きく変わってきたが、人に貢献しているという意味では今も昔も変わりないように思う。
乗用馬として乗る人に楽しみを与え、競技馬としてスポーツのパートナーとなり、競走馬としてスリルと感動を与え、姿の美しさと存在感で人に癒しを与えてくれる。

今、豊かになった人間が自分達のQOLをさかんに問う時代になったが、人間が多くの場面で恩恵を受けている馬達のQOLを考えてみてもバチはあたらないだろう。
その馬たちに少しでも感謝と尊重の念を持って接してこそ、人間が万物の霊長としての立場を誇れるのではないだろうか。





2013/03/20 1:37:18 | リンク用URL

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