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2009
先日、装蹄師さんが来たときの事である。
ひととおり作業が終わって道具を片付けながら世間話をした。
馬に対しての感覚が似ているのと歳が同じなので話がはずむ。
しかも経験が豊富で実際に調教もしていたので勉強になることもたくさんある。
その彼が、
「装蹄をしている友達が携帯に写真を送ってきたんだけど見る?」
と言われのぞき込んでみた。
携帯の写真は小さく見ずらい。
おまけに逆光だった。
馬が洗い場に立っているのは分かった。
「流産した子馬が母馬のそばに横たわってるの?・・・かなぁ・・・」
黙って携帯を差し出す彼に写真のイメージを言ってみた。
立っている馬の足もとになにやらヌメヌメしたものがあった。
それを聞いた彼は、
「もっと恐ろしいものだよ。」
と説明を始めた。
「サラブレッドの2歳馬が装蹄道具を脇腹に突き刺した状態で立ってるんだよ。」
そう説明してくれた。
下の写真で分かるだろうか。
これは実際の写真ではないが、画像の右端に銀色の金属製の物が置いてある。
下の写真がその部分を拡大したものである。
ちょうど平らなお皿に棒を突き刺したようなものだ。
この道具は装蹄師が削蹄(蹄を削る)をするときそばに置くもので、棒状の所は磁石になっていてヤスリやニッパーがそこにくっつきかがんだ状態のまま取りやすいようになっている。
写真の馬の脇腹にはその台がささっていたのである。
削蹄をしているときに馬がひっくり返り削蹄道具の上に落ち、その勢いと体重で運悪く伸びている棒が馬の肋骨間を突いたそうだ。
そう説明を受けるとなるほど、逆行で光って分からなかったその台のシルエットが確認できた。
棒の部分はほとんど馬の体内に入っており、皿状の部分だけ体の側面にくっついているように見えた。
流産した子馬のように見えたものは大量の血だった。
可哀想にその馬は獣医が到着する前に出血死をしたそうだ。
洗い場の事故は頻繁に起こりやすく、下がコンクリートの場合が多いので大きな事故になりやすい。
何かの拍子につないである馬が立ち上がったり、前に飛び出した時に起こる。
馬は顔をむくちとロープで柱に固定されているためその勢いでひっくり返るのである。
このような事故はほとんどの場合若馬に起こる。
グリーンウエイランチでは若馬をつながれる状態に慣れさせてから洗い場につなぐという馴致をするが、それでも最初は柱に直につなぐことはない。
1人の人に前を持ってもらい、もう1人の人が馬の手入れをそこですることから慣らしていく。
実際に洗い場につなぐときは、バンと弾みをつけて強く引っ張ると切れるようになっているヒモにロープを結ぶようにしてある。
そして洗い場に馬をつなぐ時は必ず人が居て様子をうかがえる時に限る。
どんなに気を付けていても、不慮の事故は起こることがある。
その可能性を最大限取り除くことが命を管理する者の一番大事な仕事だと思う。
最後に写真を見せてくれた彼がつぶやいた。
「この写真を見て、馬はどうなったかとみんな聞いた。 だけど装蹄師は無事だったかと誰も聞かなかった。」・・・と。
この言葉は胸にずしりと来た。
馬という大動物を扱うことは日頃の安全を真摯に考えて行動する必要があるとつくづく感じた。
2009/10/19 21:18:19 | リンク用URL
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