アメリカ・ノースカロライナ州にある日本人向けの牧場「グリーンウェイランチ[GREENWAY RANCH]」ブログ

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Apr

16

2012

春の大奮闘 C、バトルの開始

2012年3月

放牧地で産み落とされた子馬を馬小屋まで移動することと、
育児放棄した母馬に授乳を促す作業を1人でやってみようと腹をくくった私は、
子馬から少し距離を置き、しばらくシェッドの中に立ち尽くした。

壁に鼻面を押しつけ、
丸めた舌を口から出しておっぱいを捜している子馬を見ながら、
どのように子馬をバーンまで連れて行こうか考えをめぐらせた。

子馬を放牧地の外へ誘導するには、両腕を使わなくてはならない。
その状態でゲートを開けるのは無理なので、
前もって全開にしておく必要があった。

IMG_0084.JPG



子馬の母親を含め、そこには4頭が放牧されている。
その馬達が開いたゲートから出ないように
まずは放牧地の奥の方で餌をやることから始めた。

馬達が配られた餌を一心不乱に食べているのを見届けて
まだシェッドの中にいる子馬を壁で挟み撃ちにして、
捕まえることに成功した。

人に慣れてない子馬の誘導は、絶対に逃がさないよう気を付けなければならない。
広いところで逃がしたら最後、バネ仕掛けの人形のようにすばしこく動いて
1人で捕まえることはまず無理だろう。

仔馬を両腕で抱きながら足を踏ん張り、
子馬の胸前に左腕を回す。
さらに右手で子馬のお尻をつかんで、
グイッ!グイッ! と前へ押し出し一歩ずつゲートに向かって歩いた。

人によっては、子馬を大人しくさせるのに尻尾を真上に持ち上げる方法をとるが、
私は苦痛を与えるような気がしてそれはしたくなかった。
幸いにも子馬は少し抵抗したが、案外素直にゲートの外まで誘導させてくれた。

そこからバーンまでは距離があり、また戻ってくるには時間がかかるので、
餌を食べ終わった馬が放牧地の外へ出ないようにゲートを閉じる必要がある。

そのため、一瞬の間だが子馬から手を離さなくてはならなかった。
シェッドの中では、壁を利用して子馬を捕まえることができたが、
今度は壁になる物がない。

そっと近づき手を伸ばすと案の定、自由を得た子馬はサッと逃げてしまう。
そんな状態だったが、ゲートを出てしばらくは他の放牧地を囲むロープが張ってあるので、
通路の様になり子馬を後ろから静かに追いながら
上手くバーンの方向へと誘導できた。

20090607-IMG_2762.jpg



問題は放牧地がない場所を移動させることだ。
放牧地とバーンの間には馬場を含め広い空間がひろがっているので、
通路の状態がなくなる前にまた子馬を捕まえる必要があった。

ところがその気配を感じた子馬は、
とっさに身を翻し、その勢いで電気ロープの間をくぐり抜けてしまった。
だが、これが幸いして空にしてある小さめの放牧地へ飛び込む結果となった。

(よし! しめた!!)
すごいチャンスだった。
これから馬小屋にたどり着くまで、どれくらいの時間がかかるか分からないので、
なんとかここで母馬に授乳させようと思いつく。

子馬をそのままにして、足早に繁殖の放牧地へ戻り、
母馬と一緒に後産も持ってくることにした。
後産はブニョブニョ、ヌルヌルする袋状のもので、
おそらく3キログラム位はあるだろう。

手で運ぶには大変なので、一輪車を使うことにする。
後産を積んだ一輪車を押しながら、母馬も一緒に引き馬して、
雨がまだ降り続く中、子馬のいる放牧地までたどり着いた。

子馬は何を思ったのか、放牧地のロープを固定するため四隅に立ててある
木の枠に鼻面を押しつけている。
本能がそうさせるのか、懸命に乳首を探す動作を続けている。
・・・「刷り込み」のような状態になってしまったようだ。

産まれて最初にかいだ臭いが板で出来たシェッドの壁だったので、
木の臭いに反応してしまう。

一輪車を置いて、母馬を子馬の近くに連れて行ったが見向きもしない。
とんでもない状況になってしまった。
この親子馬は互いにそっぽを向き、相手のことはまったく無関心だった。

喜ばしい子馬の出産がこのような状態になり、
おまけに天気は雨で、私の志気は下がっていった。
心の中にジワジワと込み上げる絶望感に襲われながら、
子馬をミルクで育てることも覚悟しなくてはならないと思った。

木の枠をチュウチュウと舌で探り命を繋ぐ乳を捜す子馬、
そしてその側で耳を背負いながら(耳を伏せる)、
子馬にこれ以上近づくなと意思表示をしている母馬。

かぶったキャップからしたたり落ちてくる雨を感じながら
私は途方にくれた。

母馬は子馬に接近することを嫌がり、
子馬は母馬にお尻を向けて木の柱にしゃぶりついている。
この異常な一組の親子馬を見ながら呆然と立ち尽くしてたら、
母馬の後駆がプルプルと震えているのに気がついた。

おそらくお産のショックと痛みが原因しているのだ。
それを見て、育児放棄をした母馬も大変な苦痛を経験したのだと理解できた。

この母馬は意味もなく子馬を捨てたのではなかった。
私は育児放棄をした母馬の気持ちが分かったとき、
この問題は解決できると直感した。





2012/04/16 0:16:31 | リンク用URL

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