アメリカ・ノースカロライナ州にある日本人向けの牧場「グリーンウェイランチ[GREENWAY RANCH]」ブログ

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2013

遅ればせながら、やっと春到来・・・? (その2)

早いもので、馬に乗るようになってから30年以上が経った。
その年月を考えると、もうベテランの域に達してきた?ような気がするが、
妙なことを今更ながら気がついた。

不思議なもので、誰か他の人が管理している乗馬クラブや牧場の馬達への思いと、
自分の牧場で飼育している馬達にもつ気持ちに違うものがある、ということに気がついた。
自分の所にいる馬達のほうがより大事で愛おしい、なんていう単純な感情ではない。

ただひたすら「怖い」という思いが出てきた。
長いこと夢であった自分の牧場を持つということだが、
いざそれが現実となったとき、ふつふつとわき上がる予想もしなかった自分の思いを知らされる。

ここを始めるまえから馬の仕事の大変さは充分わかっていたつもりだし、
苦労を覚悟の上でのビジネススタートだった。 
ところが、晴れて牧場のオーナーとなった暁に感じる自分の心境の変化までは想像できていなかったのだ。

先に書いた「怖い」という感情だが、なにが怖いかというと馬が怪我や病気になることがとにかく怖い。
それは自分の馬、預かり馬に関係なくである。

牧場を始めて7年になり、ようやくその恐怖感もだいぶコントロールする、
あるいは開き直ることによって平常心を保てるようにはなった。
しかし、最初のころはちょっとでも馬の調子が悪いと心配で心配で落ち着かず、
頭の中はその事でいっぱいになってしまうほどだった。

具合の悪いのは馬なのに、自分も馬と一体化してそんな気分になってしまう。

そしてデューリーの件に関しても、その頃はまだ
(そしてこれからも)修行の足りない私はパニック状態になってしまったのである。

今まで他のところでは、
獣医学に興味があったせいもあり馬を治療する場面では積極的に手伝いをしながら見学させてもらった。
血を見るのはまったく平気で、非常に落ち着いていた。

DSC00486.jpg


(獣医さんが馬の顎の怪我を治療する様子。 馬は体が大きいため伝わってくるものもインパクトが強い。)

DSC01328.jpg


(デューリーの検診の様子。)


ところが、「怖い」という感情を持つようになってから、
情けないほど治療の場面ではおどおどしてしまう。

私は目の前で流産の処置を待っているデューリーの首をさすりながら、
獣医さんやブリーディングマネジャーが準備する様子をキョロキョロしながら見守った。

治療の前に簡単な説明をしてくれたが、よく覚えてない。
内容としては、管を2本ほど使い、子宮口を広げながら液を流し込んで胎児を流し出すような感じであった。
私は、処置のあいだ馬の気を紛らわそうとデューリーの顔や首をさすっていたので、
行っている作業は見えないでいた(本心は見たくなかった)。

獣医さんとブリーディングマネジャーは、
「届かない・・・。」 とか 
「外れてしまった・・・。」とか
「私はこっちの方を持っているからXXXして・・・。」
などと声をかけあっていた。
そんなに頻繁に行われる処置でないのが、2人の様子から感じられた。

15分・・・、20分くらいした頃だ、
「アッ、出た!」
と高い声を上げたブリーディングマネジャーが、
かがんでコンクリートの床に落ちた物を拾い上げた。

もう、この時の私の心臓はドキドキの頂点だった。
私の方へ差し出された彼女の手を、一瞬見るのをためらった。
(拾い上げられた物が馬の形をしていたらどうしよう・・・)と、
躊躇したのだ。

ゆっくり、恐る恐る覗いてみると、想像とはまったく違うものがそこにあった。
大きさとしては、ニワトリの卵大。
半透明の膜のなかに形の分かりにくい白いものがある。
見かけとしては、卵を割ったとき黄身についている白いものに似ていた。

「これが仔馬になるはずだったのよ・・・、悲しいわね。」
と、ブリーディングマネジャーは手の平にある膜の中の白いものを指で触りながら言った。

獣医さんは、落胆している私を察したのか、
「胎児の体に異常があったから育たなかったと言うこともあるので、
かえって早く処置ができてよかったかもしれないわよ。」
と慰めてくれた。

2013/05/29 4:32:32 | リンク用URL

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