アメリカ・ノースカロライナ州にある日本人向けの牧場「グリーンウェイランチ[GREENWAY RANCH]」ブログ

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2013

フチュリティーの裏側 (中 II)

年が明け1月になると、レイニングホースを生産している牧場は早々と2歳になった馬達のブレーキング(初期調教)を開始した。
その若馬たちは来年のフチュリティーを目指してトレーニングされることとなる。

サラブレッドと違い中間種のレイニングホースは管理が比較的楽なのと人手不足も関係して、仔馬の頃は病気怪我でもしない限り、予防的治療をする以外はほとんど人の手にかかることなく2歳まで放牧地で育つ。
ある程度のホルターブレーキングはするが、そのあとはほっておかれるので半野生馬のような状態だ。

2歳といっても、仔馬は春に生まれるようタイミングを計りながら生産されるため、実際には生後20ヶ月前後である。
グリーンウェイランチにもその年齢に達した仔馬が今年は2頭いるが、まだあどけなく体は小さい。
そんな仔馬達を見ていると、放牧地でのんびりと育っているものをいきなり馬房という狭い環境におき、落ち着く間もなく乗るための調教を始めるのは可哀想な気がする。

DSC01340.jpg


(まだ体つきが華奢な2歳馬たち)


当然、人間と密に接してきた時間が少なく慣れてないため人の動きにいちいちビクッとし、その様な状態で翌日から円馬場での調教が慌ただしく始まるのだ。
この時期、馬房からは2歳馬の不安ないななきが聞こえてなんとも騒々しくなる。

グリーンウェイランチでは他のレイニング牧場とは違う育成方法を選び、仔馬達をゆっくりと慣らしながら育てることにしているが、一般的には上記のような流れが毎年繰り返される。

そして、その流れはとても速く、馬の性格にもよるが扱いやすい性質だと鞍付けから乗り手が騎乗した状態で動かすまでを2〜3日でやってしまう。

通常、馬のブレーキングは若手トレーナーの基本的な仕事である。
彼らのほとんどは、レイニングホースの調教を覚えるために牧場へ就職してくるが、それは武者修行にも似ていて技術が伴わないと首にされ、またそこに自分の求める物がないと辞めていく。
人の出入りを見ていると、短くて数ヶ月、長くても2〜3年で他へ移動してしまう。
1箇所の牧場で2〜3年勤め上げられるような乗り手はそれなりの技術も身につき信用も得るので、たいがい引き抜きにあって他へ移ることが多い。

新米のトレーナー達はたいがい子供のころから馬に乗っているため騎座がしっかりしていて、馬が暴れても落馬せずに乗りこなすので私は感心しながら見ていたのを思い出す。
彼らは未調教の馬は乗りこなすが、レイニングはまだ未知の分野なので先輩トレーナーのやることを見ながらテクニックを学ぶ。

初期調教で仔馬がおとなしく駈歩までするようになるとハミや脚にゆずることを教えたり、スピンやストップなどマニューバーのとっかかりの部分を教えながら自分の技術も磨いていく。
若手トレーナーによって馬が安定してくると、能力のある馬はヘッドトレーナーへと渡される。

レイニングホースの調教は時間との勝負で、馬達は驚くほどに早く様々な動作を教え込まれる。
2歳馬のトレーニングを開始した時点で、最初の目標としてローカルのフチュリティーが翌年の夏頃から始まるのでそれに間に合わせるためである。
また、フチュリティーの出場を目指しているノンプロや投資目的の人が、有能な若馬を求めるので、より仕上がっているほうが売りやすいためでもある。

若い馬達には気の毒な状況だが、フチュリティーという競技会は大きくお金の動くマーケットなのでレイニングホースの生産牧場はそこにフォーカスする。

レイニングの競技を見た人には演技中の馬の動きがどれだけ激しいものか分かると思うが、当然その様な動きを可能にするためトレーニングはかなり厳しいことを馬に要求していく。

拳や脚の使い方はブリティッシュ馬術をする人からは考えられないほど強く過激である。
乗り手の意志を理解するのに鈍い馬などは、お腹からは拍車によって、口からはハミにより受ける傷で血を流す事もある。
トレーナーは調教中のその一鞍で馬が良い動きをするまでやめることはしないので、見た目にはほとんど馬との戦いのような状態になる。

そしてやっと納得できる動きを馬がするとその場で下馬をして、他の人が連れてきた次の馬の調教にとりかかる。
トレーナーにしごかれる羽目になった馬は調教が終わると、頭から足に流れるほどにビッショリの汗をしたたらせながら、息荒く洗い場へと引かれていくのだ。

グルームによって洗い場で馬装を解かれた馬はシャワーで汗を流してもらうと馬小屋へ入れられる。
グルームも同様でひっきりなしに運ばれてくる馬の手入れに慌ただしく対応するため、その様子は機械的で生き物への暖かい感情は伝わってこない。

大きな牧場は様々な作業が分担されるので日常の飼い付けや馬房掃除はほとんど馬のことは知らない、そのような作業だけをする人達によって行われる。

馬達は調教が開始されると沢山の人に囲まれるが、牧場で仕事をしている人からは優しい愛撫や言葉はなく仕事の対象物として扱われている。
唯一、馬が優しくされるときはオーナーと巡り合うことができた馬くらいだろう。

牧場で働く人達は、みんな馬が好きだからその仕事を選んだはずだ。
それなのに馬達はその人間から愛情を持って扱われてないように見えるのは何故なのだろう。




2013/01/21 9:08:16 | リンク用URL

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