アメリカ・ノースカロライナ州にある日本人向けの牧場「グリーンウェイランチ[GREENWAY RANCH]」ブログ

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2012

春の大奮闘 I、バトルのエピローグ

2012年4月

母乳の量を仔馬のオシッコから推測できると判断した私は、
翌日から産室の掃除をゆっくりと注意しながらすることにした。

その日から三日間で人工哺乳に切り替えるか否かを判断しようと思った。
特別な根拠はない・・・ただ、どこかに道しるべを作ることで気を休めたかった。
それまでに脱水症状が見られず仔馬が元気でありますように、と願う。

産室にはオガではなく、藁が敷いてある。
それをフォークでかき分けながら、大量のオシッコの跡は母馬のもので、
少ないのが仔馬のものだと決めることにした。
藁の下はゴムマットなので、オシッコの跡は確認しやすい。

その他にも拠り所になるものが必要なので、
仔馬の皮膚の状態で脱水症状の有無も調べる。

仔馬の胸前の皮膚をつまんで引っ張り、
皮膚に弾力性があって、すぐもとに戻るようであれば脱水症状の危険性はないと思ってよい。
母乳が水分の補給源でもある新生児を調べるにはこの方法は頼りになるはずだ。

また今までの経験で、誕生した仔馬が2〜3日たつと、
体つきがふっくらしてくるので
見た目の印象も母乳の量の判断材料になる。

それとやはりオシッコをしている所を目撃するのが一番の安心だった。
この仔馬は私が心配しているのを分かっているかどうかは別として、
2日目も馬房の前を通り過ぎる時にタイミング良く、
「ジャー!!」とオシッコをしてくれた。

いつも不思議に思うが、馬の様子を常日頃観察する習慣がつくと、
ひょんな時に、馬たちは色々な形でなんらかのメッセージを送ってくれる。
そして、何か疑問に思ったことなど答を知る手助けをしてくれる。

普段の馬房掃除でも、ボロとオシッコの量、
それからボロに関しては形状も意識して見てるといつもと違う時がある。
ボロが柔らかい時などは、
馬が普通にしていても体調が万全でないのが想像できるので、
そういう時は、トレーニングを休むか軽く終わらせるようにする。
よく 「快眠、快便、快食」を人間の健康の判断基準にするが馬も同じ事だ。

さて、予想もつかない展開になってしまった今春(2012年)の馬の出産だが、
あの台風のような一時に起こった、
母馬の育児放棄、雨天での仔馬とのバトル、親子馬の絆を作る作業、
母乳の量についての懸念、
それらの全ては数日の内に嘘のように収まってくれた。

母馬は仔馬と馬小屋で1日一緒に過ごした後、母性を取り戻したのか
翌日には仔馬に向かって「フルルルル〜」と優しく鼻を鳴らして話しかけ、
すっかりお母さんの表情をするようになった。


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(仔馬放棄の翌日、授乳中に母馬がしていた仕草はお母さんそのものになりました。 
2012年4月1日撮影)

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(母馬の仔馬を見る表情がとても優しいです。 2012年4月1日撮影)


そして、仔馬も本来あるべき行動をとるようになった。
必死で助けようと頑張ったのでちょっとガッカリだったが、
健康チェックをするため産室に入ると,仔馬は母馬の陰に隠れようとした。

母乳の量も問題なさそうで、しばらく注意して発育状態を見守ったが、
いつも元気で活発に動き回り、1週間の産室生活から放牧地に移動した時は
「危ない!」 と思うほど全速力で母馬の回りを何周も走るほどの成長ぶりだった。


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(順調に発育してる仔馬は食いしん坊で、つまみ食いをしています。 2012年5月撮影)

3月31日、凝縮された時間に起こったとんでもないハプニングで、
次々に判断と行動が要求され、それも未知の状況を1人で対処した経験は、
馬から私へのギフトだったような気がする。

もし、この日自分一人だけでなく他に人がいれば心強かったかもしれない。
意見を交わしながら対策を考え、それに伴う作業が一緒にできただろうし、
ピンと神経の糸を張らずに、気分的に余裕も持てたはずだ。

だけど、そのような状況だったら
母馬の後産の匂いに反応する仔馬に気が付いただろうか・・・。
そして、生まれたての仔馬が刷り込みによって何かを覚える、
そんな瞬間も気付けただろうか・・・。

馬を仕事にしている人間にとって、
彼らを理解するチャンスが与えられることほど素晴らしいものはないと思う。

今、放牧地で寄り添う親子を見て、ふとあの日の出来事を思い出す時がある。
一度は離れそうになった親子が、完璧な絆で結ばれている光景を目にする度に、
ポッと心が温かくなるのを一人で味わうのも良いものだ。

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2012/05/22 7:47:53 | リンク用URL

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