アメリカ・ノースカロライナ州にある日本人向けの牧場「グリーンウェイランチ[GREENWAY RANCH]」ブログ

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May

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2012

春の大奮闘 H、小さな手がかり

2012年3月

いつもの事ながら、馬小屋から家まで歩くときは色々と思いを巡らす。
作業の段取り、問題がある場合は解決策、馬に乗った時は反省点など。

馬や牧場のことは、何をしていても頭から離れたことがなく、
寝ているときでも考えていたりするので、たまにその癖から離脱して
全てを忘れてしまいたいと思うこともある。

そして、今朝の育児放棄事件に関して頭の中を忙しく駆け回っているのは
「疑問と心配」だった。

母馬の母乳が足りない場合、どう対応していったら良いのだろう・・・。
仔馬を人工哺乳する必要性が出たら、
これから先しばらくは日常の作業内容がガラッと変化することになる。
今の状態で手一杯なのに、果たして仔馬の面倒を見ることができるのだろうか・・・。

もし、仔馬がめでたく母馬から授乳を許されたとしても、
母乳がたりない場合それをどうやって知ることができるのだろう。
発育状態が芳しくない、ということで判断するのであれば
対応は手遅れになるような気がする。

弱ってしまった仔馬をもとに戻すのは大変なことだし、
へたすれば生かすことさえ難しくなる。

獣医書に書いてあった、母乳が足りない場合の仔馬の様子(執拗に乳を飲み続ける)
を観察できたとしても、果たしてそれだけで判断できるのであろうか。

母乳の量が足りないとしても、
仔馬が乳を吸っているうちにもっと出てくる可能性もあるのではないか。

人工哺乳を選ぶならば、苦労して繋いだ母子を再び離さなくてはならない。
育児放棄をした母馬相手に逆戻りはまず難しいので、
この件に関しては慎重に行動する必要があると思った。

これからの対応を決めるのは馬の様子から受ける自分の勘を頼るしかなさそうだ。
また、勉強させられる出来事が起こってしまったわけで、
天はこれでもか、というほど次から次へと課題を与えてくれる。

家に戻ってドアを締めると、外で作業しているときは分からなかったが、
雨に濡れて子馬の毛や泥が付いた衣類が臭っているのに気がついた。

悪臭というわけではなかったが、
仔馬の体から移った羊水の臭いが染み着いていてとてもそのままではいられず、
身ぐるみ着替えることにした。

汚れたジーンズを脱いだとき、
足のすねに無数の青たん、赤たんの花が咲いていた。

長靴を履いていたにもかかわらず、その上から仔馬にキックされた時に受けた打ち身だ。
産まれて時間の経ってない仔馬の蹄は、
お産中に母胎を傷つけないようにまだ柔らかい。
沢山のアザは痛くはなかったけれど、馬の持つ力を克明に印していた。

暖かいお茶と軽食で少し元気を取り戻した私は、
バトルが終わった戦地を訪れるような気持ちでバーンに引き返す。
予想のつかない光景を見る不安や恐怖のようなものがあり、
気になるのは子馬の安否だった。

建物の通路をドキドキしながら歩き、そっと産室を覗いてみたら
母馬はまだ乾草をポリポリ食べていた。
そして、仔馬はせっせと乳を飲んでいる。
(良かった・・・、何事もなく無事だ。)

それでも先ほど浮かんだ疑問は解決していない。
(母乳は足りているのだろうか・・・)

答を知る方法はないものか、と自分に問いながら
通路をはさんで産室の向かいに積んである乾草の山のてっぺんに腰かける。
食事をして気持ちが落ち着いた私は、そこで夕方の飼い付けまで親子の様子を見ることにした。

母親は相変わらずで、餌にしか興味がないようだ。
(この子はお乳はもらえても、愛情はもらえないまま育つのかな・・・)
と仔馬を不憫に思う。

無心にお乳を飲んでいる姿を哀れに思いながら見ていたら、
しばらくして仔馬は母親から離れた。
ちょこちょこと馬房の中央まで歩き、立ち止まったかと思ったら尻尾を上げ、
後ろ足を広げながら腰を落とす。

そして、 「ジャー!!」 と勢いよくオシッコをした。

100_0214.jpg


(別の仔馬ですが、こんな感じでオシッコをします。)


仔馬のオシッコをする様子を見ながら私は大笑いをしてしまった。
そして、元気な音と共にモヤモヤとしていた気持ちが一気に晴れた。

(なぁーんだ、オシッコの量は母乳の量のヒントになるじゃない。)
真剣に悩んでいた自分が可笑しく思えた。
(よしよし、しっかり観察していけば大丈夫だ。 よかった、よかった!)
本当に、小さな手がかりだけれど心底ホッとした。







2012/05/15 10:24:51 | リンク用URL

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