アメリカ・ノースカロライナ州にある日本人向けの牧場「グリーンウェイランチ[GREENWAY RANCH]」ブログ

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Feb

10

2017

ホースセンス (装鞍前の馴致)

2月10日にフェイスブックで公開した動画の説明です。

子馬に対して、ロープを使いながら、
異物が体に触れる(当たる)感覚に慣らす作業を行っています。
ウェスタン流のブレーキングは通常一人で行います。
馬が唐突に動いた場合、一人の方が安全だからです。

ウェスタン鞍の鞍付けの様子は、次回の動画で紹介しますが、
その様子を見るとなぜこの作業が必要なのか分かります。

この日で、テリーがこの子馬に接するのは二日目。
初日では、子馬を知るために丸馬場で軽く追っていました。
残念ながら、その時点ではブレーキングのブログは書く予定がなかったので、
撮影した動画はありません。

私の場合、
この段階を迎える前に十分馬体に手(ポンポンと叩く)やブラシで触れて
子馬が自分の体に何か触れる感触をリラックスして受け入れるまで
ロープの作業はしません。
馬により個体差はありますが、当然このために時間を使うことになり
テリーと私の子馬へのアプローチの速さに違いが出てきます。

なぜ私が時間をかけるのかという理由の一つですが、
扱う人間の身体的な特徴があります。

丸馬場の中のテリーと子馬の動きを観察すると分かりますが、
ロープがポンと体に当たった時、子馬の当然のリアクションとして
身をひるがえし逃げようとする動きがあります。

もし私が最初の下地(十分触れる作業)無しにいきなりテリーが動画で、
やっているように子馬に接した場合、
身長160センチ標準体重の私は、相手が子馬とはいえ踏ん張る力がないため、
ロープを掴んだままだと、その反動でもんどりをうつようにして
勢いよく子馬の方へ引っ張られてしまいます。

馬の習性は、
急に自分に向かって動くものに対しそれから離れようとするので
子馬がたとえ人に慣れていても、バタバタと走るように向かってくる人からは
とっさに逃げるという行動をします。

そのような人の動きは、
馬体に触れる(当たる)ロープの刺激のみに慣れてもらうという
根本的な目的を果たす前に、子馬は人の急な動きに注意が行くため
目標とするポイントが人と馬の間でずれてしまいます。

子馬にしてみれば、怖いものは人なのか・・・、
ロープ(体に感じる刺激)なのか・・・
といった状態になるのかもしれません。

子馬にとっては、一度に二つの「怖い」ものがあり、
怖い相手が人であれば、後の馴致を更に難しいものにしてしまいます。

また、もし私がロープを持ちきれないで離してしまった場合は、
子馬に逃げるチャンスを与えてしまいます。

その結果、子馬は逃げれば怖いロープから解放される事を学習するため、
なんとしてでも力ずくで逃げる習慣がついてしまいます。
このような「悪癖」も後の馴致を難しくさせます。

ロープを使用しながらの馴致で、注意したいことがあります。
子馬が逃げる時にムクチにつないだロープがパンと強く張られるわけですが、
もしロープを持つ人がそれに応じてロープを引っ張り返した場合、
まだ体が十分発達していない子馬は、
ロープが瞬間的に強く張られることによってバランスを崩し転倒することがあります。
これは絶対に避けるべき事故なので、細心の注意が必要です。

あとこの作業をする時のコツです。
恐らくテリーは無意識にやっているのだと思いますが、
動画の彼の視線に注目してみてください。

テリーは、決して子馬に視線をむけてないのが分かります。
馬はとても敏感な動物なので、人の視線も状況によってはストレスになります。
この作業は、何かが子馬の体にポンと当たる刺激のみに慣らすのが目的です。
扱う人は、そのことを十分理解し自分がどのように子馬に影響を及ぼしているのか、
絶えず気を配る必要があります。

ロープを使用しながら馴致する方法は私もよく行いますが、
どのような方法をとるにしても、自分の出来る可能性を考慮するのは大事なことです。

私の場合は、放牧地で馬が捕まらないなどのケースは別として、
馬の気持ちを知るために、顔の表情に注目することがよくありますが、
自分で飼育してきた馬たちで、信頼関係が築かれているからできることです。
(11月21日にフェイスブックで公開)



2017/02/10 23:37:39 | リンク用URL

Feb

06

2017

ホースセンス (動画にできない理由)

今年に入って2歳になった馬のブレーキング(新馬調教)を開始した。
2歳馬は人に飼育され人間を知っている年齢だとしても、
まだ馬本来の姿が色濃くある時期の馬だ。

初めて経験する 人が自分に対してやること・・・
若馬はそれにいちいち大げさに反応して、
馬とはこんな動物なんだと改めて分かるブレーキングの季節。

アメリカでレイニングの牧場を長い間見てきたこともあり
ウェスタン流の調教は真新しいことではないが、
新馬調教の場面で今ほど心を揺さぶられた記憶がない。

馬が持つ習性や個々の性質を六感すべてに感じ、
馬が何かを学習するきっかけとその瞬間を見るたびに
自分に与えられた馬を知る機会に深く感動している。

今年の2歳馬のブレーキングは前のブログで紹介したテリーに任せている。
彼の長い経験から得た技術や知識をもとに調教を進めていて、
私が段階を踏んでゆっくりと行う調教方法とはかなり異なり興味尽きない。

テリーのやり方はとてもスピィーディーに結果を出すため
それは見事で鮮やかだ。
そのような場面を見る機会はなかなか無いと思い、
動画で紹介していこうとしたが、今は逸る気持ちを抑えている。

グリーンウェイランチで行ってきた調教理念は、
じっくり馬と関わり合って馬の信用を得ながら穏やかに物事を進める
無難で安全な方法を取っている。

ただしこれをやるには、ある環境が必要となる。
それは、ブレーキングに時間がかかっても誰からも苦情が出ないということだ。

それに対してテリーは、
若馬を調教しながら生活の糧を得てきたプロのトレーナーで
馬を仕上げて 「なんぼ」 という厳しい現実に身をおきながら生きてきた。
依頼主は早く結果を望むので和気藹々モードだと時間ばかりが経過し、
それは多額なトレーニング費用に繋がるためプロとして評価は下がる。

お互い、真摯に馬と関わるという意味では同じだが、
何十年も食うか食われるかの世界に生きてきたテリーの調教法は、
選ぶ手段の多さ、手掛けてきた馬の頭数などここのものとは比べものにならない。

私が馬に言い含めるようにして何かを教えるのに3日かかるところを、
テリーは馬の反応に対応する手段のみで5分とか10分で相手を手の内に入れる。

悔しいかな、
馬を理解するという部分ではテリーと同じ見解なのに、
ブレーキング専門で生きてきた人に太刀打ちできない。

特に相手がスタリオンで、男っ気が強く挑戦的な場合は
ソフトな方法だけでは馬が増長してしまいリーダーシップを取るのは難しい。

個体差があるので一概には言えないが、
スタリオンは時として力で制すことも必要であり
テリーは男の感覚と身体的な力で馬と対等に向き合い
相手を 「降参させ、従わせる」 という選択肢を取ることができる。

ただ、力で制する場合、勝負に出るタイミングと力加減の判断、
それプラス相手を押すときと引くときの間合いの読みが非常に大事になる。
馬の様子を見ながら、いかに呼吸を合わせられるかがポイントで
テリーが馬と関わる様は、時として格闘技を彷彿させるものがある。

熟練したトレーナーなので、
馬と自分自身の安全を考慮しながら作業は進められるが
状況によっては人馬ともども激しい動きをするため
動画での公開は慎重にすべきだと感じている。

なぜなら、
そのような場面はブレーキングを手掛けたことがない人には過激に映るだろうし、
テリーの作業を見て同じようなことを試みようとする場合、
馬の感覚を知り尽くしていないとかえって馬との関係をこじらせてしまうからだ。

そのような理由で、
これからフェイスブックにアップしていく動画は、
馬と人が一番ラディカルに動く数分は除くことにした。
私の感覚では、それだと真の大事な部分を伝えられず不本意なのだが、
上記に書いた理由からあえてそうせざる負えないような気がする。

その代り・・・と言っては変だが、
動画で公開しない場面は言葉で補足するようにしたいと思う。

20170204190912.jpg


テリーが2歳スタリオンに鞍付けをしている場面








2017/02/06 9:10:16 | リンク用URL

Jan

26

2017

ホースセンス (待ち人来る)

馬の生産、育成、調教、そして様々なゲストを迎え入れながら
四季折々の自然の変化が直接五感に伝わる牧場の生活。

ここでの営みは人をも含む生き物中心で
当然といえば当然かもしれないが、
繰り広げられる日常そのものが生き物のようだ。

10年という牧場の年齢を迎えて新しいERA(時代)へと駒を進めるため、
私は子馬を専門の調教師に委ねようと決意するに至った。

グランドワークは別として自分自身も年齢を重ね 
若馬に乗るのは体がついていかなくなったのと、
牧場運営という別の部分へもエネルギーを注ぐ必要があるためだ。

ただ、それをするにあたりどうしてもやりたくないのが
子馬を他の牧場へ預けるということだった。

以前は、経験豊富な調教専門の所へ子馬を預けたこともあるが、
何事もなく戻ってくることがなかった。

他所へ移動したための環境の変化や心が伴わない機械的な扱いに
繊細な仔馬の精神は強いストレスを受けるのだろう。
具合が悪くなったり怪我をしたりの積み重ねで
預けているあいだ気が休まらない。

仔馬が調教によって変わっていく様子をつぶさに見られないのもネックだった。
そんなこんなの他にも理由はあって、グリーンウェイランチになんとか
通いで調教をしてくれる技術者はいないかと長い間模索し続けてきた。

そして去年、
ひょんなタイミングから 「待ち人来る」 現象が起こった。
その人は何年も前に面識はあったものの、しばらく音信が途絶えていた
テリーという名前のフランス人。

テリーは、数えきれないほどの若馬を手掛け、
様々な血統と様々な用途の馬を調教してきている。
大会などに出てくるショーマンではないので、知る人ぞ知るといった馬乗りだが
その方がこちらは助かるし、年齢が若すぎないのも良かった。

調教師が若いと勢いがあり過ぎ、また経験も浅く馬に無理をさせかねない。
調教のはずが逆に馬の不信感をかってこじれる可能性もある。
・・・かと言って、人は若馬相手に機敏な立ち回りをしなければならず
経験が豊富でもある程度の年齢になると新馬調教はやらなくなる。

個人的な考えだが、馬の調教で大切なのは馬が若い時の基礎固めだと思っている。
その時期に乗る人が馬の習性を熟知し、個々の性格と能力を見抜き、
小手先の技術だけに捉われることなく馬の心の中にも入っていけるような感覚がないと
良い馬づくりは難しい。

腕の良い調教師を探すには、
このような大きなジレンマがあるのが馬の世界で
幸運にも求め続けた人材がようやく見つかったのだ。

新しいERAを迎えたグリーンウェイランチにとって、
テリーとのめぐり合わせは大きな穴をスポッと埋めたような出来事だった。

0124171514a-2.jpg


(調教中のテリー)

今現在は、能力はあるのに気性の難しい4歳牝馬を調教してもらっているが、
来月から2歳馬をスタートするので若馬のブレーキングに興味のある人は
ぜひグリーンウェイランチを訪ねて頂きたいと思う。

「藤本みどり」と「グリーンウェイランチ」で登録してあるフェイスブックでも
動画を載せながら、調教場面を紹介していく予定だが、
文章や短い動画では感じられない馬との呼吸の合わせ方などは
実際に見る価値がある。


















2017/01/26 22:15:46 | リンク用URL

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